天災と国防 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (2011年6月10日発売)
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感想 : 35
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 本著も「ドストエフスキイの生活(小林秀雄著)」同様、「地震と社会〈下〉(外岡秀俊著)」に言及があったので読んだ。
 ほんと、寺田寅彦の「「地震の現象」と「地震による災害」とは区別して考えなければならない。現象のほうは人間の力でどうにもならなくても「災害」のほうは注意次第でどんなんにでも軽減されうる可能性があるのである。(p 38)」のひと言は、当たり前ながらも、秀逸だ。
 でも、学者が前もって警告しても被災者(一般人)は時が過ぎれば覚えてられないということを「つまり、これが人間界の「現象」なのである。(p137)」と至極ニュートラルな立場で語る。でも寅彦は悲観して終わることなく、「教育」の大切さを説く。
 一方、「文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を十分に自覚して(後略)」という寅彦の言葉、これをどれほどの現代人が心して科学技術を享受しているのか...。寅彦にしてみれば氏の憂はより確実なものになっている。透徹した見識を持つ寺田寅彦に、改めて、会えた一冊だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年11月16日
読了日 : 2023年11月16日
本棚登録日 : 2023年11月16日

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