ゆゆのつづき

著者 :
  • 理論社 (2019年10月16日発売)
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本棚登録 : 157
感想 : 21
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主人公、由々が子ども時代の"ゆゆ"を回想しながら物語が進みます。「お気に入りのお洋服を着た日にはなんだか素敵なことが待っているかもしれない...」というワクワクした気持ちは誰しも経験したことがあるかもしれません。

"ゆゆ"もその一人。11歳の夏休み最初の日に、一期一会だけれども一生のなかで印象に残る人たちと出会うことになります。50代を迎えた由々ですが、その記憶は決して色褪せることなどなく、その後の物語の潤滑油のような役割を果たします。時がたち、黄の花のワンピースを着た由々の心にはある出会いをきっかけに若い頃、懸命に蓋してきた思いが解き放たれ、やがて11歳の"ゆゆ"を受け入れるのでした。

夏×海の雰囲気が好きなので、このような世界観を味わえる本に出会えて嬉しいです。主人公の仕事が翻訳ということもあって、外国の物語が登場します。夏の空は青く澄み渡り、海の向こうから時折外国の風が混じった穏やかな風が吹いている、そんな世界へ連れていってくれたようです。物語の中にはたくさんの音楽が流れています。主人公がピアノを嗜んでいたからか、由々の心情をメロディで表している描写もありました。
作中の喫茶店で流れていた「ランパルが演奏するヘンデルのフルート・ソナタ」、「ディアベリのソナチネ」、「軽快なテレマンの協奏曲」などを流し、由々の心情に寄り添いながら読み終えました。しかし偶然が偶然を呼ぶというもので、やはりちょっと展開に現実離れがありましたが、フィクションなので仕方ないでしょう。
とても穏やかで優しい物語です。

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感想投稿日 : 2023年4月13日
本棚登録日 : 2023年4月8日

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