モノマネ芸人、死体を埋める(祥伝社文庫ふ12-1) (祥伝社文庫 ふ 12-1)

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  • 祥伝社 (2023年7月13日発売)
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感想 : 48

 有名野球選手のモノマネ一本で芸能界で生きている、マネ下竜司。

 そんなある日、モノマネを許していて仲の良い往年のレジェンド選手、竹下竜司が殺人を犯す。

 殺人事件が表沙汰になれば、マネ下の芸能界での食い扶持もなくなるということもあり、殺人を隠蔽することを協力するマネ下。

 果たして、彼らは殺人を隠蔽し続けることはできるのか?

 まず、面白いなと思ったのは、冒頭部分。マネ下竜司が始球式でネタをするのですが、そのネタが本人の竹下竜司を知らないのに、面白い。

 観客が笑うところで笑ってしまうので、本当にネタを見ているみたいでした。

 また、モノマネ芸人の芸名が面白く、普通の会話なのに福山雅治のモノマネ芸人、ぷく山雅治や役所広司のモノマネ芸人、役所狭司、藤田ニコルのモノマネ芸人、藤田似テル、椎名林檎のモノマネ芸人、椎名すりおろしりんごなどなど、名前の字面だけで笑える不思議。

 実際、モノマネ芸人さん、確かにそんな感じの芸名多いよなぁと思いますが、よくこんだけのモノマネ芸人の名前考えたなと思いました。

 さて、本作はミステリーですが、どこかコメデイタッチでもあり、滑稽とも映る内容となっています。

 そして、モノマネ芸人として芸能界で食べていくためには、実はモノマネしているネタ元である本人と一蓮托生ということもあり、明日をも知れないなと思う反面、実は私達も主人公であるマネ下竜司とそんなに変わらない生活を送ってるなと思いました。

 それは、モノマネ芸人同様、実は私達も、明日は何が起こるかわからないということです。

 明日になれば、勤めている会社が不祥事を起こしたり債務超過で倒産するかもしれないし、上司が出世争いから脱落して自分自身の地位も危うくなるかもしれない。

 いきなりコロナ禍になって観光客が減って店がたちいかなくなり、店をたたまなければならなくなったりするかもしれない。

 きっと自分で生きているつもりでも実は何かに頼っていたり、何かのおかげで今を生きているに過ぎない私達は、モノマネ芸人のマネ下とそんなに変わらないのではないか。

 そう思うと、明日は我が身だなと思いつつ、モノマネで生きていくにはあり得るストーリーだなと思える作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月26日
読了日 : 2023年8月26日
本棚登録日 : 2023年8月26日

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