The Brilliant Life of Eudora Honeysett: A Novel

著者 :
  • William Morrow Paperbacks (2021年10月19日発売)
4.80
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本棚登録 : 9
感想 : 3
4

ほっこりした気分になれるような話が読みたくて選んだ本。

身体の衰えを日々感じながら、病気や痛みなんかに苦しみ出す前に、自分の死に方くらい自分で決めたいという強い意思を持っている85歳のEudora。周りと深く関わることを避け、なんでも一人でこなすのを好む彼女は、自分の人生の終わり方として、スイスでの安楽死を希望するようになる。施設の担当者や医師に積極的に問い合わせをしたり、「本当にそれがあなたの望むことなのか?ただ鬱状態でそんな事を言っているのでは?」と彼女の真意を確かめようとする彼らの言い分を遮り、着々と手続きを進めようとするEudoraだけど、隣に引っ越してきたとびきり明るくて個性に溢れた10歳の少女Roseと、最愛の妻に先立たれた近所に住むStanleyとの友情が、彼女の毎日に彩りを与えることになり、彼女の頑なだった心をほぐしていく。そんな現代のタイムラインと並行に、Eudoraの生い立ちや大好きだった父親との思い出、疎遠になった妹Stellaとの確執、母親とEudoraの関係性なんかが昔の視点から語られる。献身的で優しくて働き者で、正に幸せになるべきはずの彼女に次々と降りかかる悲劇は、読んでいて悲しくなったし、Eudoraがどうして今のように頑なな性格になってしまったのかが徐々に明らかになる。

ラストはまぁ、こうなるんだろうなぁ…というのは、あらすじを読んだだけでわかるんだけど、「十分長生きしたし、死に関与した苦しみを体験する前にこの世を去りたい」と願うEudoraの気持ちはわかる気がする。でも、話の中に登場するDeath Doula (出産時に妊婦をサポートするドゥーラの存在は知っていたけど、終末期のサポートをするドゥーラがいるのは知らなかった…) が言っていたように、痛みや苦しみがない死や、救急車や病院の中ではなく住み慣れた自宅で迎える死、そして自分の愛する人達に囲まれて迎える死のような、いわゆる”good death”というのは、死に対する恐怖や不安や要望を周りに話し、シェアすることで可能になる、という考えが新鮮だった。そしてその為には、信頼出来る人達と常にコミュニケーションが取れる環境を確保しておかないといけないよなぁ、というのも再確認した。歳を取ると、その環境の確保こそが難しくなってくるんじゃないかと思うんだけど、それは常日頃から心掛けておかないといけないのかも。

物語が進むにつれて、周りに感化されてだんだんEudoraの刺々しい言動がまぁるくなっていくのが微笑ましかったし、自分の気持ちに素直になることを認めた彼女が最後に愛する人達に囲まれている姿を想像して、期待通り胸がほっこりした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Others
感想投稿日 : 2022年1月14日
読了日 : 2022年1月14日
本棚登録日 : 2022年1月3日

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