The Clash of Civilizations and the Remaking of World Order

  • Simon & Schuster (2011年8月2日発売)
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感想 : 3
5

1996年出版の『文明の衝突』(サミュエル・ハンチントン著)。9.11を予言した本としても有名。

冷戦後の特にバルカン紛争、中央アジア紛争をモチーフに世界を宗教を中心とする「文明」で分類し、その在り方を整理している。
現在、各地域での起こっている紛争が国家と文明の捻じれから生じていることを考えると、仮に文明という基準に国家を再構築したら?、というユートピアが出てきてもおかしくない(ISISのように)。
第三次世界大戦を避ける意味でも文明をコアに考え、文明間の対峙を前提に如何にその関係性を保つか、という考え方を提言している。確かに現在の各国の外交方針にもそれが浸透しており、アメリカがイラクに地上部隊を再派遣しない背景のひとつでもあるのだろう。
アメリカにいてよく分るのだが、アメリカは決して複数の文明が融合したユニバーサルな国家ではなく、様々な文明をコアにした集合体なのである。その意味でサミュエルソンの整理は頷けるところでもある。

(意外ではあったが)日本は一つの独立した文明として扱われ、日本の将来を中国とアメリカとの関係性で占っているが、これは日本にとって大きなテーマであり、本来であれば、政治のレベルでもっと活発に議論すべきテーマなのだと思う。どうしても日本人は文明音痴になってしまう。

素朴な疑問として、著書が西欧文明にいる側で、西欧文明の優位性を前提にしている本著をイスラム文明側からどのように評価するのだろうか。
また、現存する移民の問題、複数の文明が混在する国家、これをどのように考えるのか。

何れにしても、現在、世界で起こっている様々な事象を「文明」という概念で整理しないと十分に理解できないことは確かであり、その意味でも本著は一読に値する。

以下引用~
We know who we are only when we know who we are not and often only when we know whom we are against.

People define their identity by what they are not.

The work ethic of the Japaneses and Koreans, consisting of discipline, loyalty, and diligence.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会科学
感想投稿日 : 2015年5月23日
読了日 : 2015年5月23日
本棚登録日 : 2015年5月23日

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