逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社 (2005年9月1日発売)
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感想 : 212
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・幕末維新に日本に滞在した外国人の記録をテーマ毎に纏めた大作。

・全体的にポジティブなトーンで書かれているが、それが真実なのか、著者に意図があるのかは不明。ただ、当時の外国人が日本に来る前に抱いていた印象と比べて、ずっと文明的で知識水準が高かったことは事実なのだろう。

・工業化される近代社会の前の普遍的な姿としての評価と日本固有で現在も続くものの評価を峻別していく必要がある。
例えば、東京を「田園化された都市であると同時に、都市化された田園」としてユニークな田園都市と評したが、これは明らかに過去の一側面でしかない。
「各人がまったく幸福で満足しているように見える」、ことも近代化社会前にあった、ゆったりとした時間の中で醸成されていただけのことかもしれない。

・一方で、日本人として心に刻み込みたいことも多い。
「日本の職人は本能的に美意識を強く持っているので、金銭的に儲かろうが関係なく、彼等の手から作り出せるものはみな美しいのです」
「低廉な品物に優美で芸術的なデザインが見出される」
「江戸の職人は真の芸術家である」
「日本人は何と自然を熱愛しているのだろう。何と自然の美を利用することをよく知っているのだろう。」

・また、新たな気付きとして、封建社会にあっても庶民レベルは自由を享受し、民主的であった、ということ。
確かに武士の比率が全体の数パーセントであったのだから、実際の行政は地域に根ざしていたのだろう。
庶民レベルでは開明的であったことは、「攘夷」が「文明開化」に直ぐに切り替わったことでも明らか。島国が故に外からの新しいものに関心が高く、それを自らの生活に吸収する欲求が国民性として根付いていたのだろうか。(この点は、現代社会でも忘れてはいけない)

・その他面白かったことは、子供について。(表題は「子供の天国」)
大人に怒られる子供を見たことがない、とか、日本の子供は泣かない、といった箇所。また、当時、公衆浴場での混浴の習慣があったことも面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2011年7月17日
読了日 : 2011年7月17日
本棚登録日 : 2011年7月17日

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