第148回(2012年上半期)直木賞受賞作(「何者」と同時受賞)、後半。
画家の長谷川等伯の生涯を描いた力作です。
当時既に大きな流派となっていた狩野派に敵視され、仕事をとるのに妨害を受けることに。
秀吉の眼前で絵を描いて見せたり、盛り上がります。
千利休との交流もあり、信仰心も篤かった等伯。
狩野永徳のきらびやかな作風とは正反対の境地に、等伯はやがて達していくのですね。
息子の久蔵は幼い頃から画才を示していて、跡継ぎが出来たことを心から嬉しく思っていたのだが。
永徳に借り出されたまま戻されずに年月がたってしまう。
板ばさみになる久蔵は気の毒だけど、永徳は久蔵を気に入っていたという
エピソードには救いも。
長谷川派に人気が出てくると、今度はどうしても人手が足りなくなり、手を尽くして返してもらう。
久蔵と故郷を訪ねるエピソードは、いいですね。
最初の奥さん・静子も出来た人なんですが、豪商の娘で店の仕事を手伝っていた明るい後妻さん・清子も、内助の功を発揮。
政治も揺れ動き、狩野派とせめぎあう中で、腹の座ったところを見せます。
武家の生まれであったことが災いしたというか、多少は勉強の機会や出世の手づるにもなるのだが、不本意ながら政治に巻き込まれてしまうこともある。
信長、秀吉、家康と政権が移っていく時代を生き抜いたのだから、それは大変でしょう。
表紙になっている松林図の風格と独自性からして、激しさと静謐さを兼ね備えた人物であることは察しがつきます。
人間くさい迷いと後悔も含めた人間像。
引き立ててくれた人物の大きさもさることながら、二人の妻と気立てのいい息子のことが印象に残りました。
- 感想投稿日 : 2013年9月1日
- 読了日 : 2013年8月20日
- 本棚登録日 : 2013年2月23日
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