若夫婦が猫を飼い、とても幸せに暮らしていたが‥?
愛あふれる切ない物語。
彩乃と未知男は見合いで出会って一目惚れ。
すぐに結婚して北米にわたります。
どちらもバツイチで、抱えているものもありました。
理想的な相手と、きれいな田舎町で暮らすことに。
まるで少女の夢見た物語のように、甘く可愛らしい展開。
保護施設で見つけた長毛のうつくしい雄猫マキシモ。
猫のことで毎日笑い、夢中になり、猫を中心にすっぽりと愛に包まれた暮らしが積み重なってゆきます。
そして16年。
猫の病気を見守る日々から、喪失へ。
これまでの幸福が暗転したかのように、苦しむことになります。
愛猫との暮らしぶりと、その後の嘆きがあまりにリアル。
設定は私小説というわけではないのでしょうが。
猫を見送った辛さを、こういう形で描かずには、乗り越えられなかったのかも。
夫婦でも悲しみ方にも違いがあり、慰め合おうにも当初は互いの顔を見ても悲しみが増すばかり。
やがて、二人の胸の中に同じ形をした空洞があると思うに至ります。
やっと少しずつ、気持ちの整理がつきかけたところまで描かれています。
まったく身動きの取れないようだったのが、いつしかさらさらと変化していく兆し。
そのことを救いに。
経験があるので、気持ちはわかりすぎるほどでした。
でもね‥出会えた喜びは、別れの辛さよりもきっと強いと思うんですよ。
悲しみは完全に消えることはないけれど、苦しみはだんだん薄れていってくれます。
そして、愛と幸せな思い出は、いつまでも続きます。
- 感想投稿日 : 2016年9月7日
- 読了日 : 2016年6月12日
- 本棚登録日 : 2016年9月7日
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