対立は、よいことではないが、あってはならないことではない。意見や価値観、それに利害の対立があるのは面倒ではあるが、一般的で普遍的なこと、という認識が足りないと、実際に対立が激化したときに、それに気づき、ソリューションを考えるのがむずかしくなる。(p.134)
独裁者に弾圧されているメディアは、独裁者は倒れれば自由を手に入れることができる。だが、日本の大手メディアが高度成長時のパラダイムから抜け出すことは非常にむずかしい。具体的には、政府の政策による利害が国民の階層間で違っていることへの言及ができない。(中略)国民に一体感を醸成する「情報の伝え方」しか知らない。ある特定の階層から苦情が来ることに耐えられない。分かりやすいキャッチだから例に挙げるが、「みなさまのNHK」なのだ。(p.189)
「思考放棄」に陥った人や共同体には特徴的な傾向があるように思う。「幸福」を至上の価値として追い求め、憧れ、生きる上での基準とするということだ。わたしたちの社会では、よく「幸福であるかどうか」が問われる。(中略)今、わたしたちに必要なのは、幸福の追求ではなく、信頼の構築だと思う。外交でいえば、日本は、緊張が増す隣国と、「幸福な関係」など築く必要はない。しかし、信頼関係にあるのかどうかは、とても重要だ。幸福は、瞬間的に実感できるが、信頼を築くためには面倒で、長期にわたるコミュニケーションがなければならない。国家だけではなく、企業も、個人でも、失われているのは幸福などではなく、信頼である。(pp.202-203)
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2017年12月21日
- 読了日 : 2017年12月19日
- 本棚登録日 : 2017年12月19日
みんなの感想をみる