奈良監獄から脱獄せよ

著者 :
  • 幻冬舎 (2023年8月23日発売)
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弓削は、数学教師として勤めていたときに女子高生の自殺を暴行し殺した罪で懲役20年となり奈良監獄に収監されていた。
罪状は、殺人罪である。
冤罪にも関わらず弁護士でさえ負けた裁判にそのあとまで真摯に向き合ってはくれないままだった。

ある日、殺人と放火の罪で無期懲役となった羽嶋に作業手順を教えているうちに彼も自分と同じく冤罪だったことを知る。
最初から番号ではなく名前を呼んでくる羽嶋に無駄口せずに距離を置こうとしていたのだが…
彼はあまりにも素直で純粋だった。
だが一度見たら忘れない記憶の持ち主でもあった。

やがて弓削に作業を教えてくれた相内から彼が恩赦で減刑になることを知り、彼と話をした際に出てからの夢が、誰かが成功(脱獄)するのを近くで見ることだと聞く。

典獄からの嫌がらせや看守の暴力で亡くなった友人や相内からの期待が膨らみ、弓削は羽嶋と脱獄しようと勝負にでる。

羽嶋から寄せられる無垢な信頼ほど、強いものはない。彼には躊躇いがいっさいないと感じたときに一緒に行動しようと思えたのだろう。

この2人の相性が良かったのかもしれないが、お互いに良い部分を最大限に活かしたからこそ…だと思った。

久しぶりに良い読書時間だった。


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感想投稿日 : 2024年3月25日
読了日 : 2024年3月25日
本棚登録日 : 2024年3月25日

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