中1の夏を迎えた景介は、美術部の課題の絵を描くために以前から惹かれていた家に向かっていた。
三角帽子を思わせる尖り屋根に真四角の窓や縦長の窓がいくつか並び、歳月の中でじゅうぶんに古色を帯びた建物はしっとりと落ち着いていた。
緑の草原に眩いほどのキンポウゲ。
まさしく絵にしたいと思うほどだろう。
そこに住む小谷津艶子さんは、祖母が入院していた時に隣りにいたおばあさんだった。
その庭で知り合ったゆりあと仲良くなり、時をおいて裏の家のやや子とも親しくなる。
けれどいずれも艶子さんがうたた寝している少しの時間だけ…。
艶子さんの探している本を見つける為に大量の蔵書の片づけを手伝うことになるが、ゆりあに会いたい一心でもあった。
幼なじみの晶子が、ただならぬ景介の様子を見て後をつけてから彼女も艶子さんと親しくなるのだが…
その頃には、景介はゆりあの存在に疑問を持ち、やや子とは…いったい誰かと漠然とした考えを巡らせていた。
引き込まれてしまうほどの魅力がたっぷりと詰まった本。
憧れと優しさと夢中になれるものがある。
そして、この家と庭のキンポウゲの風景に気持ちをもっていかれるようだった。
夏は終わってしまったけれど夏におすすめの児童書といえるだろう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年9月7日
- 読了日 : 2022年9月7日
- 本棚登録日 : 2022年9月7日
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