江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1960年12月27日発売)
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初江戸川乱歩作品。

『二銭銅貨』
江戸川乱歩の導入としてやさしめなお話。怪盗に憧れる書生二人の知力バトルと思いきや、最後の思わせ振りな描写が秀逸。

『二癈人』
ある意味一番ぞっとした話。こういう巧みな心理操作で人生が狂うというのはミステリーというよりとてもリアルな感じ。

『D坂の殺人事件』
明智小五郎初登場作品。
奇抜なトリックを描くのではなく人間心理の奥深さ、恐ろしさを描く、江戸川乱歩独特の探偵小説。素人の主人公がトリック的な部分に着目して犯人を見誤ったのに対して、探偵の明智小五郎は徹底的に心理的な部分を探索して真実にたどり着いているのが面白い。

『心理試験』
こちらもお得意の人間心理を専門的に描いた作品で、明智小五郎も登場。
主人公は殺人に至るまでに色々と考えを巡らせ、知力の限りを尽くして偽装工作も万全に整える。だけど明智小五郎の眼力にかかればそんながっちがちに固めた偽装工作にもわずかな綻びが見つかって、最後は粉々に崩壊。

『赤い部屋』
罪に問われることのない殺人。作中では作り話ということになっているけれど、現実にそんなことがあるのかもしれないと思わせるトリックと、赤い部屋の中に漂う緊張感が凄まじかった。

『屋根裏の散歩者』
ちょっと滑稽な感じのするお話。他の作品同様、殺人がなされそれが探偵によって暴かれるという内容だったけれど、主人公が屋根裏から覗く人間模様をメインに描いても面白そう。

『人間椅子』
まさに気味が悪いの一言。屋根裏の散歩者に似ていて、他から気づかれずに人の様子を観察しているわけだけれど、椅子の中の観察者が観察相手に対して抱く欲情など、とてつもなく狂気。

『鏡地獄』
鏡の魅力に取り付かれて狂っていく青年のお話。これも相当理解も共感も困難な話だけれど、親もなく周りに構ってくれる人間も少なく、財産だけがたくさんあるという状況で、少しずつ世間一般とは感覚がずれていってしまう様子はなんとなく分かる感じがした。

『芋虫』
閉鎖された空間の中でただただ獣のように快楽に溺れる男女のお話。
何が恐いかって、手足を無くして何も出来ない状態であるにも関わらず生かされた人間の悲惨な末路がとてつもなく後味が悪く恐ろしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2020年5月8日
読了日 : 2017年12月3日
本棚登録日 : 2020年5月8日

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