82年生まれ、キム・ジヨン

  • 筑摩書房 (2018年12月10日発売)
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3ヶ月の娘を育てる私を助けに度々来てくれている母が、この小説を私に勧めた。私は1985年生まれ、ジヨンと同世代だと言っていいだろう。母は私に、「働きながら子育てをしてきて、このような事は少し思い当たることもある」と言った。

ガラスの天井指数というものがある。仕事における男女平等の度合いを表すもので、OECD加盟国29ヵ国の中で日本は韓国の次に悪い28位。でもそんなに悪い実感はない。私は新卒で入った会社でサラリーマンの平均年収以上のサラリーを稼ぎ、その後転職を経て、今年育休中にも関わらず昇格した。会社は保活コンサルを雇って、育児休業者の復職のために、住んでいる地域に合わせた保活情報を提供してくれた。

ただ振り返ってみれば、韓国の女性たちが娘のためにと努力して積み上げてきた様に、祖母から母へ、母から私へと続く思いが、よくわかった。その上に今の私がいるのだ。そしてそれは報道にある様に、まだ様々なところに残っている。
私も幼い娘の母となった今、私は娘にどの様な社会を手渡せるだろうと考える時がきた。

母は長男の嫁だが、55で早期退職をするまで、保育士として勤め上げた。
祖母は母が嫁いだ時、この家に主婦は2人も要らないと言って、働き続けることを勧めたのだそうだ。
祖母は、きっと母に自分の様になって欲しくなかったのではないか。男の子3人と何もしない夫の面倒を1人でみて、自由になるお金や気晴らしの時間も少ない、そんな自分に。

私の出産を機に、母とは出産育児について話すことが増えた。
私は、妹と2人姉妹だ。母は、妹を産んだ時のことを振り返って、「爺ちゃんは、女の子だと分かると病院にも来なかった」と、悔しそうに言った。私はそれなりに凝った名前だが、妹は、祖父と父の無関心の表れなのか、生まれ月と同じ名前である。

私の同級生は、女の子は大学なんて行かなくていいと言う父親を持ち、母親から渋々学費を出してもらった。アルバイトで生活費を稼ぎ、苦しい時には連日もやしを食べて大学を卒業した。有名企業に入った後、彼女は今、彼女がずっと欲しかった温かい家庭を築き、海外で楽しそうに暮らしている。

医学部の試験で女性が不当に扱われていたことは、確かに私には関係ない。
でも娘には関係するかもしれない。あなたの娘にも、関係するかもしれない。あなたの孫にも、関係するかもしれない。
人は他者の為を思う時、最大のパフォーマンスが出せる。
さあ、娘達のため、孫娘達のため、父親、母親、お爺ちゃん、お婆ちゃん、動き出そう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年12月13日
読了日 : 2020年12月13日
本棚登録日 : 2020年12月13日

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