大空のサムライ かえらざる零戦隊 (光人社ノンフィクション文庫 1)

著者 :
  • 潮書房光人新社 (2003年5月14日発売)
4.12
  • (54)
  • (45)
  • (25)
  • (2)
  • (3)
本棚登録 : 411
感想 : 36
3

 零戦ブーム元祖といわれる本。零戦のデビューから最盛期の時代に活躍した戦闘機パイロットの体験記である。
 撃墜機数を競い合うスポ根気質で、敵機を見ると「むくむくと闘志が湧いてきた」という調子で屈託がない。撃墜すれば喜び、敵搭乗員の負傷を間近に見るとひるみ、同僚の仇討ちを誓うという気持ちをそのまま書いているあたり、まるでスポーツ選手の回顧録のようだ。空の格闘戦の詳細などは剣道の試合を思わせる。
 強靭な体力、精神力、鍛錬を至上とし、悪運強く生き延びた人の記録は、文学気質の者には決して書けない事実という意味で貴重だと思う。
 ただ、著者は戦争末期の苦しい時代を戦っていないから勝者のように書けるのだという批判は留意すべきだろう。アメリカの技術開発・改良によって零戦が時代遅れになりかけた頃、著者は負傷して第一線を退いている。
 太平洋戦争前半ではアメリカの飛行機も脆弱だったこと、硫黄島で初特攻から四ヶ月も前に体当たり作戦があったことなども興味深く読んだ。
 追記: この本を読むと開戦当初、アメリカの新型爆撃機が機銃を燃料タンクに打ち込まれただけで炎上したり、搭乗員が簡単に被弾したりと、脆弱だったことがよくわかる。零戦が二十ミリ機銃を積んでいるのも画期的だったそう。
 零戦がデビュー当時としては極度に防御軽視の設計だったわけではなく、やられるたびにタンクを改良し、エンジンを強力に、搭乗員を守る背板をつけ……と迅速に進化した米機と大きく差がついたというのが妥当だと思う。終盤で出てきたF6Fヘルキャツトなんて 写真を見たらどんだけ世代が違うの、って笑っちゃうくらい初期の戦闘機と違います。
 日本も紫電改(見た目はF6Fそっくり?)など新型機を投入していたのですが、戦局の悪化により大量生産は叶わなかったそうです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 戦争・SF・ファンタジー
感想投稿日 : 2015年4月19日
読了日 : 2015年4月19日
本棚登録日 : 2015年4月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする