オスカ-・ワオの短く凄まじい人生 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社 (2011年2月25日発売)
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本棚登録 : 1494
感想 : 171
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軽妙で読みやすい語り口の文章はとても上手く、定期的に「うおおお」とテンションが上がるシーンが来るかんじ。

表題やあらすじからは非モテオタク男子の話を想像するが、実際は半分くらい彼の姉・母・祖母の来歴が物語られて「荒々しくたくましい女性たちの小説」という印象。特に姉ロラの第2章が白眉。男と家出した彼女を迎えに来た母から走って逃げようとするシーンの疾走感と迫力はすごい。

肝心のオスカーの話は正直そんなに……持てない男の哀れな自己憐憫と破滅を物語る手付きはウエルベックのほうが好みかな。

オタク・サブカル要素も表層の面白さ以外の意義があるのか疑問。『AKIRA』とかTRPGとか、俺らの知ってるやつが出てきてうれし〜以上の何かがあるのか。オタク的想像力を、ドミニカの独裁者トルヒーヨの悪夢的治世と対置というか衝突させて描いている……的なことがあとがきにあったが、そこまで成功しているのかは怪しいと思った。

ラストで姪にあたる少女を新たに登場させていい感じに結ぼうとしてるのもなんだかなぁ。。

文章が上手くて読みやすくてキャッチーで物語の筋は単純で
、良くも悪くも『Twitter文学賞1位』に相応しく、それ以上の何かではないと感じた。

あとこれマジックリアリズムではないと思います。超自然的な要素が少しでも出てきたらマジリア判定なの?
訳者あとがきでも、本書のバルガス・リョサ『チボの饗宴』への目配せ(対抗意識)を紹介したすぐあとで「この、中南米マジックリアリズム全体に喧嘩を売っているとしか思えないディアスの態度…」と書いているが、いい加減、中南米文学=マジックリアリズムという無理解にもほどがある図式はやめませんか。出版社が商業的意図でやるならまだしも(新潮社だし)、翻訳者・研究者がって…… 裏表紙に推薦文が載ってる高橋源一郎も。(まぁゲンちゃんへの信頼はとっくに失せているので今さら幻滅とかはしないけど)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2022年6月2日
読了日 : 2022年6月1日
本棚登録日 : 2022年6月2日

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