*2023.10.12 感想追記
『夜よりほかに聴くものもなし』山田風太郎 読終
「それでも・・・」
「おれは君に、手錠をかけなければならん」
の台詞で締めくくられる老刑事・八坂が主人公の連作集
あの山田風太郎(お色気忍術ものなどで有名)ということでどんなミステリなんだろうと思ったら
まずタイトルが良い
そして決め台詞が良い
老刑事の長年の勘による着眼点が良い
トリックが全て犯罪者の人間心理にあるところが良い
人間考察が深いところも良い
こんなに実直かつ硬質な しかし複雑な人間心理の綾を描く刑事推理物を書いていたとは知らなかった
全十話の連作の犯罪はほぼ衝動殺人などではなく
犯行に及ぶまで数ヶ月~数十年という月日を費やし執念深くそして周到に練られた計画が多い
更に「法では裁けない」であろうと思われるものも少なくない
そういう秘めた決意の犯人たちに何故か出会ってしまいふとした仕草や言動・または表情などから感じ取った違和感を頼りに事件の本質に迫っていく八坂刑事
この八坂さんそれほど饒舌でないのだが犯罪に至るまでの犯人の心情を吐露させてしまう何かがあってそれは「罪を憎んで人を憎まず」といった解かりやすい温情のようなものではなく一種の諦めのようなものが垣間見えてそれが犯人たちを安堵させるような気がする
そんなに感情移入する描写ではないのに思わず涙しそうになった話もあった
(個人的には1話・7話・9話が好きかな・・・八坂さんと一緒にため息つきたくなったし)
山田氏の他のミステリも読んでみたい
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年10月12日
- 読了日 : 2019年11月30日
- 本棚登録日 : 2019年11月30日
みんなの感想をみる