妻と飛んだ特攻兵 8・19 満州、最後の特攻

著者 :
  • 角川書店 (2013年6月8日発売)
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本棚登録 : 196
感想 : 21
5

終章に向けての、苦しくなる、畳みかけるような物語の構成は小説以上。すばらしい。


戦争というと、外交の一手法として選ばれるもの。と理解していた。

しかしながら、戦争は、被害者になるか加害者かになるかはおいておいて、人殺しのことであり、ひとりひとりの人間にとって決して望ましい手段であるとは思えない。

国を構成するひとりひとりの国民を、この手段に訴えかけてもいいというところまで思いつめさせるのは、やはり、自分の大切な人たちを蹂躙するものを許せない、という心情ではないだろうか。

しかし、いざ、兵士として、あるいは軍首脳として、戦争を戦う時には、自分の大切な人を守るというより、やはり組織の一員として、その気持ちと直接に関わらない「人殺し」に加担せざるをえないのではないかと思う。

そこを、迂遠ではあっても、なんとか繋げ、自分を納得させる作業が、軍に、軍人に欠かせないのではないかと思う。

しかし、そこが、やはり、個人的にはどこか納得いかなそうな気がしている。

他方、この本の主人公は、軍とその指揮系統を離れ、目の前の同胞、大切な人を救うために、自ら「特攻」という手段を選んだ。
軍人として、というより、人として、立ち上がった。

その点で、清冽なものを感じた。
著者も記していたが、歴史に刻むべき内容であると考える。


余談にはなるが、この本には醜悪で、倫理にもとるロシア兵等が描かれている。読んでいて、息苦しいものがあった。
この本には描かれていないが、別の場所・時期においては、もしかしたら日本兵にも類する行為があったのかもしれない。

私は、その鬼畜に劣る所業は、国籍に付随するものではないと思う。

今更、そういった行為をあげつらい、自国をなんらかの交渉の優位にたたせるため、金銭のため、他国を貶める言動は浅ましいと思う。
日本には、日本人には、そのような浅ましい言動を世界に向けて発信してもらいたくないと考える。

戦勝国の子孫にも、戦敗国の子孫にも、その他の国の子孫にも、互いのこれからのために新しい関係が必要なのではないだろうか。

新しい悲劇を生まないためにも。
余談ではあるが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年9月8日
読了日 : 2013年8月20日
本棚登録日 : 2013年9月8日

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