阿刀田高の著作には必ず、著者の作品群の仕分けが載っている。曰く
「ミステリー・奇妙な味、ブラックユーモアに属する小説」「現代の風俗・男女の関係をテーマとする小説」
本作はどちらかと言えば前者・ミステリーに属する小説集に当たるのだろうけれど、著者の作品は年々ボーダレス化が進み、以前ほどクッキリとジャンルの分類はしにくい作品が多い。この本もそうだろう。
阿刀田高作品の愛読者なら過去に読んだ事のあるテーマやモチーフがここでも扱われていて目新しさは無い。
が、著者もエッセイで「作品のアイデアはキャリアを重ねる毎に枯渇する。けれど作品を仕上げる手腕と技術はある程度までは年々上達する。掛け算して作品のレベルを維持している感じ」と語るように、見慣れたテーマを澱みない筆致で一遍に仕上げる職人の技量めいたものを楽しむ本と言えるのかもしれない。
400ページ強の分量、水を飲むかのように滑らかに身体に取り込んだ気がする。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年2月8日
- 読了日 : 2023年2月8日
- 本棚登録日 : 2022年9月14日
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