泣き虫弱虫諸葛孔明 第壱部 (文春文庫 さ 34-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (2009年10月9日発売)
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感想 : 59
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吉川英治は三国志の後書きで「鬼才奇才と演義は言うけれど、孔明は偉大なる平凡人ではなかったか」と語っている。

後世の小説や映画などに登場する、とことん真っ直ぐで正直で正義の塊のような人物は、そのあまりにも浮世離れした「白さ」によって周りから怪訝な眼に晒されるという演出を施される事が多い。その元祖は三国志の諸葛亮孔明にあるのではないかとも思う。

本作の孔明も偏屈で計算高くて変わり者として描かれていて(劉備やその配下も概ねそうだ)歴史の本流に突然現れて二十数年で表舞台から消えた謎の多い人物の、謎の部分を皮肉と笑いに替えて描いている。
親近感の湧く描写になっていて、孔明の周囲の人々…姉や弟や舅や師匠などとのやり取りも、一風変わっていて面白い。

ただ、ひとつ残念なのが
孔明出廬から長板玻での張飛と趙雲の活躍、孔明の呉での大論陣、周瑜との駆け引きや赤壁の大戦に至るこの辺りの流れは三国志演義全体のクライマックスと言ってもいいし、個人的に好きなシーンの連続なので2巻以降、少し引き締めた調子で描いて欲しいなぁと思ったりはする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月1日
読了日 : 2022年7月31日
本棚登録日 : 2022年7月15日

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