最終巻では、いよいよアメリカの参戦により独伊日が敗戦へと向かっていく様子が描かれます。ナチスドイツの退潮に伴いソ連が中・東欧、日本での勢力拡大をもくろむ中で、欧州での民主主義が共産主義により侵食されることを懸念したチャーチルは、米国の介入を求めます。しかし、ルーズベルトの死とトルーマンの承継の狭間で時機を逸することとなり、結果として彼自身が名付けた「鉄のカーテン」がバルト海のシュテッティンからアドリア海のトリエステの下ろされることとなります。東西ドイツは分断され、この後約半世紀にわたる東西冷戦時代が幕開けることとなります。この過程で、英国の介入によりギリシアは民主主義を維持する一方、ポーランドはソ連の共産圏に飲み込まれる結果となり、明暗を分けます。
広島・長崎での原爆使用に関しては、英米の意見は日本の降伏を強いるために不可欠という点で全く一致していたといいます。チャーチルの言を借りれば、その使用は「彼らの名誉を救う口実を見出し、最後の一人まで戦って戦死するという義務から逃れるだろう」と正当化されています。無条件降伏の最後通牒は、7月26日に公表されたものの日本政府に拒否され、8月6日と9日の原爆投下をへて、ようやく降伏を受け入れることとなります。この経緯については、後世にその過程がより精査される日が訪れるような思いがします。
欧州大陸の復興について、チャーチルは仏独のパートナーシップの重要性を指摘し、ヨーロッパ合衆国に関する構想に言及しています。さらに、大戦後の世界統治機構としての国連や、北大西洋条約機構の重要性を示唆しするとともに、朝鮮戦争、イスラエル建国に伴う中東の不安定化に触れています。これらの地域諸問題は、今日にも一向に解消する兆候は無く、今後も政治・外交関係の中心課題であり続けることでしょう。
同年7月の英国下院選挙でチャーチルは破れ首相を辞任することとなるのですが、その前にチャーチルは、投票の結果についての幻覚を見た、とのたまわっています。以前の爆風を予知したエピソードと言い、彼には常人に無い霊感が備わっていたように思いました。
終戦前の1945年4月にルーズベルトは逝去しますが、チャーチルは盟友の死を悼んでいます。次のトルーマンに関しては、朝鮮戦争への介入を英断と評したり、マーシャルプランがいかに西欧諸国を共産主義への傾倒から救ったかを強調したりと、彼の米国に対する信頼がいかに強いものであったかが覗えます。
- 感想投稿日 : 2020年7月24日
- 読了日 : 2020年7月24日
- 本棚登録日 : 2020年7月24日
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