遠田潤子を作品を読むと、この人はブルースを奏でるような小説を書くなぁと思う。で、ジョン・ハートだが、彼の作品にはいやブルース・スプリングスティーンを感じてしまうのである。
本作は彼の初期の作品。さすがにまだこなれていないせいか、「ラスト・チャイルド」「終わりなき道」に比べるとちょっと荒っぽいかな。それでもこの後の作品群に連なる「あがいてもどうにもならない不幸と向き合って生きていく悲しさと美しさ」というテーマは、本作にもしっかり流れている。
当たり前の話だが、小説家ってのも成長していくんだなと思う。この作品も駄作ではないが、やはり既読の、後に刊行された作品の方が、味わい深い。
「流暢にスピード感があって、ページを繰る手が止まらない!」…的な小説ではなく、むしろ読めば悲しくなったりツラくなったりするような描写が続いたり、情景描写も美しくなかったり、美しくても冷たかったり…。むしろページを繰る手が止まりそうになることも度々。でも、その気が重くなるような文章のリズムの中に小説のだいご味が隠されている。
重く流れるリズムに身をゆだねて、ジョン。ハート作品のだいご味を味わう。1冊読むとズシンと心に響くが、これもまた至福の読書体験なのである。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外小説
- 感想投稿日 : 2019年4月5日
- 読了日 : 2019年4月4日
- 本棚登録日 : 2019年3月21日
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