双頭のバビロン

著者 :
  • 東京創元社 (2012年4月21日発売)
4.16
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本棚登録 : 635
感想 : 87
4

単行本の大きさで上下2段組みビッシリの538P。中味もゴッテリな壮大さの大河小説。さすが皆川博子、少々食べ過ぎた感があるくらいお腹いっぱいの1冊である。

20世紀初頭から第二次大戦前夜までのハリウッド、上海という2大退廃都市(バビロニア)を中心舞台に、癒着双生児として生まれた2人のゲオルグとその二人をつなぐツベンゲルらの生き様を描く。

この作品に漂うのはひたすらに退廃とか爛熟とか腐敗とか魔窟とか…そういう類のものばかり。特に上海租界の描写ときたら文字で読んでるだけでも鼻をつまみたくなるくらいの圧倒的不潔感。

だからと言って、物語まで腐っているわけでは決してなく、ドラマの展開は素晴らしい。特に後半に登場人物たちのこれまでの所作がつながって全体像が俯瞰できるようになっていく描写は見事。腐敗臭の中でもため息をつきたくなるほどである(いや、実際に腐敗臭はしていないから)

体力と気力にある程度余裕がないと、読み切れないかも知れないボリュームと雰囲気。それでもこの手の作品を許容できる人にはお勧め。若干苦手な俺でも面白かったし…。

でも、今の気分は、ちょっとしたお手軽爽やかものを読んで疲れをほぐしたいような。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本小説
感想投稿日 : 2020年4月27日
読了日 : 2020年4月27日
本棚登録日 : 2020年4月3日

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