セクシュアリティをことばにする 上野千鶴子対談集

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  • 青土社 (2015年4月24日発売)
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上野千鶴子という人は対談でも真剣を抜いていどみかかるのがわかる。相手は一応語るに値する人たちばかりだが、遠慮容赦せず切りかかる。特に女性に対してはそうで、読んでいてはらはらさせられる。宮地久子さんとの対談では、「ジェンダーはフェミニズムの基本で、どんな身近な男とも共有できない何かをどんなに疎遠な女とも共有できるという感覚がありますね。ないですか?」と話を向けるが「全然ないです」と一蹴される。また、上野さんが東大に入る際は、『セクシーギャルの大研究』といったマスコミ向けの本は業績に挙げなかったというのは、策略家としての本領発揮。ゼミもあくまで学問的なものだったそうだ。北原みのりさんは年代がかなり下のせいもあるが、北村さんが自分自身のためのヌードを肯定的にとらえるのに上野さんは抵抗を示す。要するに、上野さんも自分の殻ができていて、それで戦えるものはいいが、そうでないものにはけっこうたじろぐ?のだということがわかった。宮地尚子さんは古典文学の研究者だが、セクシュアリティの観点から古典を読み説くのも面白そうだ。その中で授乳期間中は排卵が抑制されて子どもが生まれにくいから、生んだ姫君は乳母に子どもを預けるのだというのを読んで、なるほどこういう言い伝えがあるのだと納得した。この俗説を信じて、予期せぬ子どもができた人もいるのだが。

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感想投稿日 : 2016年6月17日
本棚登録日 : 2016年6月17日

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