竹山道雄というと『ビルマの竪琴』を真っ先に思い浮かべるかも知れない。しかし、竹山は一高のドイツ語教授として、エリートたちを教え育んだだけでなく、戦中戦後を通し、自由を守るために、軍やナチスそして共産主義とも戦い続けた言論人として名が知られていた。竹山の偉大なところは、ドイツ、フランスといった西洋を深く学びながら、ナチ批判からキリスト教批判まですすみ、その中で自分の思想を形成し、それは戦中戦後を通し一貫し、終始ぶれなかったことである。それは、東京裁判に対する批判、安保条約への賛成という態度にも表れている。本書は、もと東大教養学部教授で、竹山の娘婿に当たる、平川祐弘氏による竹山道雄評伝であり、竹山一族の顕彰もあることはあるが、それよりも、竹山の生きた時代とはなんであったかを竹山を通し描こうとしたものである。それは、時に平川氏の持論の開陳となっていて、平川節があちこちで聞かれる。したがって、平川氏に好意を持たないものからすれば、竹山を借りた平川の自伝ではないかという批判も聞こえて来そうだが、竹山氏に身近で接し、その娘を妻とした平川氏だからこそ、竹山道雄の魅力を存分に彷彿させる本書が書けたのではないだろうか。
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- 感想投稿日 : 2013年4月14日
- 本棚登録日 : 2013年4月14日
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