短編集。何度も涙しました。
優しくて、暖かくて、ふんわりとじんわりと胸に染み入る物語。
主人公たちの設定、そして心の動きとそれに伴う彼らの言動の描写が本当に素晴らしいです。
作者の森浩美さん、本業は作詞家。
昔SMAPのファンだったこともあり、お名前は知っていました。
SHAKEやダイナマイトは森さん作詞のヒット曲です。
小説を出していたなんてびっくり。しかも秀逸でさらにびっくり。
登場する主人公は40代~50代。年老いていく親、成長する子供たちとの摩擦、夫婦間の溝、愛する人との別れ、仕事上の責任、経済的な不安。
きっと今の私には想像もつかないような、どんよりと重い問題が降り積もったりする。
『家族』の在り方。
その絆、繋がり、それぞれのカタチがあって、目に見えない気持ちがそこにある。
そんな当たり前のことが、なんだかすごく、愛おしいです。
誰もが大事なものを抱きしめている。
「いくら大事なものを持ってても、もっと大事なものができれば、先に持ってたものは手放さなきゃならない。荷物を持つにも順番があるんだ。欲張ったり無理をすれば、それは大事な荷物じゃなく”お荷物”になるだけ。」
人は、多くのものを抱え込めない、と。
だけど、だからこそ、大事なものはしっかりと見据えていたい。
大事に持ってていたい。
誰かを想うっていうのは、何かを手放してでも大切に持ち続けるってこと。そして、そう想える相手がいるっていうのは、すごくしあわせなこと。
家族にしろ、親友にしろ、恋人にしろ。
守りたい、幸せにしたい、そう想える誰かがいるだけで、ひとはしっかり自分を持つことができるはず。
日常を痛いくらいにしっかり見据えて書かれた作品。厳しい現実がありありと突きつけられたりもする。
でも、どの短編も、最後には一筋の光が見える。
問題は解決しなくても、大事な誰かがいる主人公は、きっと救いの手を差し伸べられているんだと思います。
そしてそれは、私たちだって、同じ。
一筋の光を信じて、素敵な明日を願って、今日を一生懸命生きてる。
それでいいと、私は思います。
「こちらの事情を口にするとき
それは身勝手な言い分になってしまうのかもしれない
でも察してほしいときがある」
- 感想投稿日 : 2014年2月7日
- 読了日 : 2011年5月22日
- 本棚登録日 : 2014年2月7日
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