なでしこ御用帖 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2012年9月20日発売)
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本棚登録 : 276
感想 : 28
3

「なでしこちゃん」というあだ名の町医者の娘、お紺が身の周りで起きる様々な事件に首をつっこみ真相を明らかにしていくというお話です。
お紺には二人の兄がいて、長兄の助一郎は小石川の診療所で見習いをしており、次兄の流吉は手先の器用さを生かし仕立ての仕事をしている。
最初の事件は、次兄の流吉がたまたま殺害された大家の第一発見者となり、容疑者となってしまうというもの。
お紺は兄の疑いを晴らすため、顔なじみの岡っ引き、金蔵から事件について詳しく聞き、首をつっこんでいく。
お紺が普段どんな風に事件に関わっているのか、どんな性格の娘なのかが分かる第一話となっています。

続く「養生所の桜草」は、長兄、助一郎が働く養生所で自害者が相次ぎ、さらに女看病人が所内で何者かに襲われ大怪我をする事件について、お紺が自ら養生所に女看護人として入り探っていくというもの。

「路地のあじさい」は、お紺の父であり町医者の洞雄の患者、おきえにかけられた殺人容疑をお紺が晴らしていく話。
居酒屋をしているおきえは余命いくばくもないと診断されており、そんな彼女には一人娘がいる。
いつもは優しいおきえだが、ふと見せた彼女の鋭い眼に一瞬恐ろしいものを感じるお紺。
その眼の意味するものとは-。
その後、おきえが馴染み客の一人を匕首で刺し殺すという事件が起きた。
おきえを庇うお紺だったが、金蔵はあきえには疑われるだけの理由があるのだと言う。

この話が一番面白かった。
娘を思う母心、そしてそれを知りながら利用する娘が切なくもやるせなく描かれている。

他「吾亦紅さみし」「寒夜のつわぶき」「花咲き小町」とどれも花の名前が出てくるタイトルになっていて、その花が作中ピリッと生かされた話となっています。
そして事件を解いていく中、17歳のお紺が二人の男性に求婚され、揺れ動く様も描かれています。

個人的に、主人公のお紺の性格が定まってない感じがして、つかみづらい性格だと思いました。
事件についつい首を突っ込む、おせっかいで行動的な女性かと思えば、作中「おっとりしている」と書かれていたり・・・。
江戸っ子で使う言葉が結構キツいと思えばゆっくり喋ってるらしいし・・・。
強気な性格かと思えば、泣き虫だったりするし・・・。
彼女の魅力がそのまんまこの話の魅力につながっていると思うのでその辺が残念でした。

ほのぼのとして軽い調子で読める本ですが、その分記憶に残りづらい本だと感じました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宇江佐真理
感想投稿日 : 2013年7月5日
読了日 : 2013年4月11日
本棚登録日 : 2013年7月5日

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