甲子園で連日、熱戦が繰り広げられている。
今年は100回の節目で、かつて活躍した選手によるレジェンド始球式など話題はつきない。
酷暑の中で試合させることの是非や商業主義など課題も多いけれど、ふらっと球場に足を運び、夏空の下、頬に風を感じながら、高校生のひたむきなプレーを見られる楽しみは何物にも代えがたい。
本書は、レジェンドのお一人、松井秀喜さんによる著書。
書かれたのは2007年で、松井さんがまだ現役、前年に左手首骨折という選手生命を左右する大けがをされたころだ。
圧倒的な素質、才能の陰で忘れがちになるけれど、松井さんの野球人生は、5打席連続敬遠や膝のケガ、NY移籍後のバッシング、手首の骨折と、通常人であれば心折れる出来事の連続だったことに気づく。
そうした逆境でも、「人間万事塞翁が馬と受け止める」「コントロールできることとできないことを分けて、できることに集中する」という姿勢で向かわれるが、最初からそうではなかったという。
勝負しないピッチャーをにらみつけ、バットを放り投げるといった態度もままあった。そうした折、高校時代の恩師はじめ指導者の方々が松井さんを注意し諭す。曰く「日本を代表する選手になろうとしたら、知・徳・体がそろわないとだめだ」「王選手は敬遠され勝負されなくてもバットを静かにおいて一塁に走った」云々。
一貫して感じ取れることは、そうした指導者の言葉を自らの肥やしにしようとする「素直さ」と、自分一人のことでなくチームや裏方さん、ファンのことを思ってプレーする「利他」の心構えだ。
齢を重ねると、えてして自らの経験に固執し、素直さを失ってしまう。自らが背負うものばかりに目がいって、周囲への感謝、周囲に貢献する気持ちを忘れがちになる。
松井さんにはとても及ばないけれど、他人の意見を聴く素直さと、周囲への感謝を忘れないようにしたい。
- 感想投稿日 : 2018年8月15日
- 読了日 : 2018年11月23日
- 本棚登録日 : 2018年8月15日
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