著書すべてを読んだわけではないが、本書は橋本さんの思想エッセンスがすべて盛り込まれているのではないかと思えるほどの完成度。集英社新書のシリーズも良かったが、本書の守備範囲のほうがより幅広い。
世の中、あるいは自分に何かしらの「ひっかかり」があるとき、橋本さんの考え方はとりあえずの解決を導く「とっかかり」となる。あくまでも「とっかかり」であって、そこから先は個人の選択肢が残されている。良質な思想とはそういうものなのだろう。
橋本さんの文章は突然自分の中に入ってきて、次の瞬間に考え方のベクトルが大きく動く。それほどの威力がある言葉を持つ思想家はそれほど多くはない。各著書がすべて有益な文章で埋め尽くされているというわけではないが、1つ2つの自分が求めている言葉を探す目的をもって一冊まるごと、あるいは年代を追って読む価値が大いにある著述家であると思う。
難しい概念を並べるでもなく、特異な経験を語るでもなく、ごく日常のごく普通の光景を描きながら発せられる鋭い考察は、自らの思考の発展に大いに役立つはずである。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年7月12日
- 読了日 : 2014年7月12日
- 本棚登録日 : 2014年7月12日
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