もういちど生まれる (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎 (2014年4月25日発売)
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そう、二十歳の誕生日は少し違ったな、どの歳も人生で一度きりには違いないけれど。
もういちど生まれるってそんな感じがしたかな。随分前に置いてきた、けれど忘れはしない、あの頃の自分の感情、過ごした空気を思い出し、懐かしさとともに苦しくもなった。
様々な思いを抱える20歳前後の学生の日常。
特有のノリには付いてゆけない場面もあったがその辺りはさらっと読んだ。
自分と重ねるところも多かった。
自分は何者でもなく(本当は何者かになりたいのに)、華やかなあちら側を遠目で見、才能のある人にはかなわないと一歩引き、とりあえずふつうという場所に寄り添っていたかもしれない。
「すごい」と人から思われるような自分だけのものが欲しいし、それはいつまで経っても同じだろう。

羨ましがられる、あちら側の人たちにも葛藤はあり、人から見られる一面だけでは生きていないということ。

「僕は魔法が使えない」と、「もういちど生まれる」が特によかった。僕は魔法が、の主人公の新が、母親と向き合うことをこう表現している。
「足し算よりも簡単で、ほうきで空を飛ぶより難しいことだった」年頃の青年にとっての母の存在。ああそうかも。
この年頃のすべての感情描写が光っていると感じ。
各章の主人公が今の自分を見つめ直す姿が眩しく、瑞々しさに、遠い過去に思いを馳せてしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年10月10日
読了日 : 2022年10月10日
本棚登録日 : 2022年10月10日

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