好きな作家の一人である。
一番最初に読んだのが「Twelve YO」だったが、その感激が今も残っている。
その後、既刊新刊を問わずその時点で刊行されている全てを読破した。
作風は一貫していて日本または自衛隊の存在意義、男の生き方、そして守るべき存在を如何にして守るか、という「男子の本懐」を指し示しながらそれを一流のエンターテインメントにするところにある。
強い男に憧れる、極限状態でも冷静な判断を下す、ということに世の中の殆どの男は強い渇望があると思われる。
第二次世界大戦において、日本に3発目の原子爆弾が投下される予定であった。
この原爆を阻止すべく戦利潜水艦の乗組員たちが活躍するのが本書のアウトラインである。
もともと映画化を前提に描かれたそうだが、小説としての完成度はすこぶる高い。
後に文庫化になったが第一分冊から第四分冊までという長編小説である。
そこに終戦という歴史の分岐点を生きた男たちのすさまじい生き様が描かれ、それに対する形で、この国の現在を問い直している。
「もはや戦後ではない」などとなんのことか分からないことを喧伝するよりも、もう一度日本という国の主権を守るためになにをなすべきかについて考えることが必要だ。
愛国心とは。国家をいかにして守るか。
50年先、100年先の日本に何を残せるか。
戦後の日本人であることを問われている。
先日「ローレライ」と題された映画も見たが、内容が薄っぺらで小説の世界観、登場人物の内面、背景をほとんど映し出していなかった。
やはりこれほどボリュームのある原作を映画化することに無理があるのだろう。
原作のある映画は、ほとんど期待を裏切られることが多い。
そのなかでも期待を裏切らない映画化のなかに「羊たちの沈黙」トマス・ハリスが挙げられる。
これは良く出来た映画化である。
その後の「ハンニバル」は結末が小説と映画では異なっているのだが、私的には小説のラストの方が甘美的で好きである。
- 感想投稿日 : 2012年9月13日
- 読了日 : 2012年9月13日
- 本棚登録日 : 2012年9月13日
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