紙の月

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2012年3月15日発売)
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感想 : 551
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どこで道を間違えたか、一歩逸れると
犯罪者となってしまう。その可能性は、誰にでもあるのではないだろうか。

うちの自治会では、2カ月に1度自治会費を集める。2000円を11件分、22000円。係は約1年に1度だが、全額揃うと
即、会計さんへと持っていく。
正直を言えば、目の毒であり、ーーうちのお金だったらなーーと、必ず思う。
この話で主人公の梨花は、それをやってしまう。

契約社員として銀行に勤務している、
梨花は、仕事帰りに化粧品を買う。その時、手持ちが足りないことに気付き、今
預かってきたばかりの封筒に手をつける。ーーー後で返しておけばいいわーーーと、軽く考えていたのではないか。それが、始まりだった。梨花の家は生活に困ってなどいない。その生活に、足りないものがあったとしたら何だったのか。

ある日、梨花は自分よりひと廻り程、年下の光太に出逢う。ここから先がいけなかった。ーーー少しずつーーー小さな音を立てながらーーー崩れていくーーー銀行のお金を使い始めたーー手を付け始めたというべき
だろうか。光太に逢う為には、偽物の
預金証書も作成した。
すぐにばれる様なものでもーーー
自分は横領をしている、ということに
梨花は、いつ頃気付いたのだろうか。
使い込んだお金が、億という金額を
超えた頃、銀行に監査が入る。


梨花は高飛びした。格安のホテルに
泊まり、なるべく外出を避け、ひっそり暮らした。・・・・偶然、日本の週間誌を
見つけてしまった。自分の記事が大きく
「銀行横領、犯人行方不明」とあった。

梨花は、観念した。
言葉の通じない国で、自首する覚悟を
決めた梨花の心情は、どのようなもの
だったか。その国に、梨花の手配書は廻っていたのだろうか。
国境の検問所へと歩く梨花は、何を思いながら歩いたのか。
ーーー何で、やってしまったのかーーー
ーーーこんなはずでは、なかったのにーーー
もう遅い。
ほんの出来心とは、怖いものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年4月16日
読了日 : 2021年4月23日
本棚登録日 : 2021年4月9日

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コメント 1件

あかぴさんのコメント
2021/04/18

こんにちわ!
色々参考にさせていただいてます。
宜しくお願いします。

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