恥ずかしながらの初ニーチェ。善と悪というキリスト教的道徳に基づく価値基準に徹底的に反発し、民主主義的「平等」思想も「近代理念」も奴隷たることの心地よさに甘んじる畜群的な在り方だと糾弾するニーチェ、「自然」はむしろ高貴と卑俗との区別を持つものであり、まやかしの平等によってスポイルされつつあるヨーロッパ世界を“善悪の彼岸”に秩序を見出す新たな哲学によって変革していくべしと説く。牧師の息子として生まれながら信仰を捨て、ワーグナーに心酔してのち決別し、絶望と希望のはざまで既成概念と戦い続けるニーチェらしい、批判的でありながら厭世的になりきれない熱意は、その鋭さゆえに強さよりむしろ健気さを感じられる部分もある。当時においても革新的な思想だったと思うが、相変わらずキリスト教的・民主主義的平等が重んじられている現代世界に生きる人間にとっても、ニーチェの言葉の苛烈さは(共感するしないの次元を超えて)十分突き刺さる。
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海外:ドイツ
- 感想投稿日 : 2009年11月27日
- 読了日 : 2009年11月26日
- 本棚登録日 : 2009年11月27日
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