自分を騙した男への強い殺意を抱きながら死んだテレパスの少女。死によっても消えなかったその強い意志としての殺意は、人間的な意識と切り離された純粋な憎悪となって加害者以外をも対象として広がって行く…。ファンタジーめいたホラー、あるいはホラーめいたファンタジー、というべきストーリーだが、センチメンタルに流れそうなある少女の物語を、かっちりとした“科学”で支えて単なるジュブナイルに終わらせないのが神林作品。魔法ではない、物理的な現象の一つとしての精神感応力――その有無はいわば肉体的な問題であり、テレパスと普通人の間にはそもそも生物学的な差異がある、という神林氏オリジナルの論理展開がとても面白かった。
それにしてもジャンルの枠にとらわれないと言うか、ジュブナイルとハードボイルドをSF世界で描き切ってしまうところが、神林氏の凄いところだと思う。青春路線にはあまりそそられないので★は三つにとどめたが、設定や作りの面白さはさすがで、神林ワールドを十分堪能できた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本:現代(1945-1999)
- 感想投稿日 : 2011年12月27日
- 読了日 : 2011年12月15日
- 本棚登録日 : 2011年12月27日
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