なんだか自分にとっては2015年がSada Yearだったらしい。「愛のコリーダ」(1976) に続いて本作も銀幕で鑑賞する機会を得ることに。
「戯作」とサブタイトルにもあるように開演と同時に登場人物がスクリーンに向かって劇場の入口へといざなってくれる。この頃までにはこの手の「大林手法」には驚かなくもなっているし、むしろ吉本新喜劇を観ているような感覚で拍手してお出迎えしてしまっている自分がいることに気づく。大正時代から昭和初期にかけての雰囲気を白黒とカラーをふんだんに切り替えつつ表現してみたり、定に洋装を着せてみたりするのは大林監督ならではの取り組みなのでは。大島版とは対極をゆくような、それでいて人のこころの切なさ、頼りなさを詩的に繊細に綴ってくれているからほっとする。
最終幕にて日本国内においてはハンセン病の扱いが96年になって初めて改善された旨のテロップが流れる。どの程度阿部定事件との関連性があったかの事実関係はさておいて、本作を通して得られる重要なメッセージであることには間違いない。大正生まれの女性を描くため、98年に公開された作品だからこそ伝わる説得力がそこにある。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
邦画:劇場鑑賞
- 感想投稿日 : 2019年8月26日
- 読了日 : 2015年11月30日
- 本棚登録日 : 2019年8月26日
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