ドラえもん[しずか編] (小学館コロコロ文庫 ふ 1-73)

  • 小学館 (1999年11月16日発売)
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感想 : 6
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このドラえもんの物語に花を添えるのがこのしずかちゃんである。しずかちゃんは決して物語を動かしたり、日常生活を対立的に示すことはない。なので、ここに収められた話の多くがしずか中心かと言われれば、そうでないことの方が多いだろう。
しずかちゃんのもつ特性は、話の中心にいることではなく、むしろ、人物たちを補い、人物たちの動きや特性を和らげるところにある。
のび太やジャイアン、スネ夫がどんなにみじめな落ちを受けようと、しずかちゃんは家から閉め出されるくらいのことだけで、しずかちゃん自身だけが彼らと同様の境遇に陥ることはないと言ってもいい。しずかちゃんが登場するだけで、場が一気に和み、恥じらいやためらいが現れる。このはたらきを便宜的に女性的と呼ぶとするなら、しずかちゃんはこの物語において唯一の女性的な存在である。ドラミちゃんの存在とはやはり違う。そして、登場する人物では年配女性や一回きりの登場のヒロインをのぞけば、物語全体を通じてしずかちゃん以外に女性的な働きをする存在はない。
それだからこそ、入れ替えロープのような道具が効いてくるのだ。肉体と付与された役割というものが切り離されたものと考えることができるにはできるのだが、やはりどこかぎこちない。どうしたって、人間は自分の性以外で考えることはできないようにできているからだ。たしかに概念としてジェンダーというのは広く考えられるようになってきた。しかし、肉体から切り離したとしても、男は女ではないし、女は男ではないことに変わりがない。
しずかちゃんの担う役割は他の人物たちと比べて小さいように見えるが、しずかちゃんを除いて、その役割を担える存在はない。これだけで充分、しずかちゃんのもたらす効果は大きいのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2017年2月7日
読了日 : 2017年2月7日
本棚登録日 : 2017年2月7日

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