社会起業家: 社会責任ビジネスの新しい潮流 (岩波新書 新赤版 900)

著者 :
  • 岩波書店 (2004年7月21日発売)
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感想 : 47
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2004年に書かれた本である。

恥ずかしながら僕は社会起業家という言葉をこの本に出会うまでは知らなかった。そういう仕事の仕方があることは知っていたけれど、それにしても社会責任と言えば社会福祉、少し広義に捉えて環境に優しい、くらいのイメージでしかなかった。

ホットワイアード誌(現在はワイアード・ヴィジョンhttp://wiredvision.jp/)によるアンケート結果が紹介されていたが、社会起業家に共感するかどうかという質問に307人中276人が「共感する」と答えたそうである。既に言葉の意味が分かる人が母集団であったと思えなくもないが、それにしても高い数字である。

さて、その社会起業家。社会を良くするという理念のもとに起業する人であり、それ以上の定義は重要ではない。働く内容よりもその姿勢に特徴があり、「働き方と生き方が同じ」と斎藤さんは解説する。「事業を通じて自分自身をさらけ出し・・・」という表現は、起業した人がどういう価値観を持ち、それをどういう形で社会に問うか、あるいは貢献するかということをあらわしているのだろう。

ある程度大きな会社を対象とし、社会起業家あるいは社会責任に積極的な会社を応援する動きに、社会責任投資(SRI)や国際組織であるBSR(http://www.bsr.org/)などがある。

しかしSVN(=Social Venture Network, http://www.svn.org/index.cfm)の活動を見た斎藤さんは「自分ができることから始めるという単純な行為が大きな力を発揮しうる」と言う。つまりは、自分の価値観を大事にしつつも、「まずはできることから」というのが大事で、誰かが見ているからやるとか、競ってやるというのではなく、自らの精神性に素直に反応する、好きなことをやる、というのがその本質なのだろう。

ちなみに、NPOであっても株式会社であっても社会起業家になりうる。事業を続けるためには、キャッシュフローを継続的に確保することが大事なので、利益を出していくことも構わない。しかし、いくつかの社会起業家を例として紹介していたが、その多くは規模を追うことはせず、自分たちがコントロールできる範囲にとどめているところが印象的だ。

元同僚も最近、社会起業をした。日本では実績がない人が銀行借入れをするのは大変だという話を聞いた。上記にあるBSRやSVNなどは、アジアに拠点はあっても日本にはない。起業する人の割合も日本は低い。こういう残念な環境ではあるが、身近には既に行動を起こしている人がいるというのは実に嬉しい。

ボクのブログより:http://d.hatena.ne.jp/ninja_hattorikun/20090901

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営
感想投稿日 : 2010年6月7日
読了日 : 2009年9月1日
本棚登録日 : 2009年9月1日

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