「結局、サイクス=ピコ協定が中東の諸問題の根源だ」。これは一見首肯しやすく、世界史でもよく教えられることからあまり疑いもせずつい使ってしまう「マジックワード」だと筆者は始める。
サイクス=ピコ協定とはどのような意図を持ってなされたのか。そして今までどのような影響を中東に及ぼしてきたのか。個別テーマについて委細深掘りしていく本書は知的興味を満たすだけでなく、露土の微妙な関係性や複雑な民族問題など、その根本背景にある課題がいかに複雑で、生半可な解決策では解消しないことを再認識させてくれる良著である。
本書発刊の2016年は同協定から100年の節目にあたる。2022年2月には、とうとうロシアのウクライナ侵攻という大事件まで起きた。この書を今改めて手に取ることは、単なる二項対立でしか語らない諸メディアの軽薄な論に踊らされないようにするためにも非常に有益である。
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- 感想投稿日 : 2022年3月21日
- 読了日 : 2022年3月21日
- 本棚登録日 : 2022年3月21日
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