The Time Traveler's Wife

  • Harcourt (2004年5月27日発売)
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感想 : 2
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非常に評価に困る本でした。
面白くないわけでは決してなく、物語に読者を引き寄せる力はあると思います。
なのに、なぜか手放しで喜べない本なのは、いったい何故なのか。
随所随所に、ハリウッド的とでも言えば良いのか、やたらに作者の「盛り上げてやるぜ!」という意気込みみたいなのを感じてしまい、逆に士気を削がれるというか……。
遺伝的な病気によって、タイムトラベルを発作的に繰り返しているヘンリーと、アーティストのクレアの恋物語というか愛物語が核の話です。一応、純愛として売られているはずですが、どうにも、そこが理解できず。そもそも、クレアがヘンリーを好きになる過程はまだ理解できるとしても、ヘンリーがクレアを好きになる過程がさっぱり理解不能です。クレアの職業・容姿その他もろもろが、ほとんど作者のそれを重なっているので、クレアというキャラクターの内面をほとんど描かずに他のキャラクターたちが急に「クレア大好き!」と言い出すのが、どうにもこうにも。
メッセージとしても何が言いたいのかが、ちょっと分かりづらいですし、登場人物も多い割には、彼らの内面はちっとも書かれていないので、感情移入もしにくく、SF風味の題材を科学的に書いている割には、それに対してはなんの伏線回収もなく……。妙なところでものすごく具体的に書かれているのに、その他はおざなりにされていたり……(ヘンリーの主治医の子供の名前やクレアの親友の名前はきっちりと毎回羅列してあるのに、クレアの兄の子供は毎回、名無しだったり。まったく話の流れに関係していないのに、9.11の事件に触れられていたり)。
一番引っかかったのは、クレアと彼女の親友、そしてその親友の彼氏(その後、夫)の関係性。親友の彼氏は、親友と付き合っているときからクレアのことが好きで、「酔っぱらったから」という理由だけでその彼氏と関係を持ってしまうクレア。彼の気持ちを知りつつも家庭を持ち、子供も3人生んでしまう親友。「あなたに何かあれば自分のチャンスがやってくると思っているのよ」とヘンリーに忠告?する親友。さっぱり意味が分かりません。道徳的に間違っているのでは?と思う。そして、そこまで道を踏み外してしまうほどの絶望感を感じない。
ただ、主人公のヘンリーは、奇妙に魅力的でした。個人的には、ヘンリーの父親とエイズにかかっている友人ベンが一番幸せになって欲しいと思いましたが。
視点の切り替えも意味があるのかどうなのかが分かりにくく、じゃあ神視点で書いてしまえば良いのでは?と思ってしまいました。面白くなる可能性はある本ですが、いかんせん、作者がしゃしゃり出てくる感じに疲労困憊です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 洋書(K〜O)
感想投稿日 : 2012年3月24日
読了日 : 2012年3月24日
本棚登録日 : 2012年3月24日

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