地上最後の刑事 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 24-1)

  • 早川書房 (2016年6月9日発売)
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本棚登録 : 184
感想 : 20
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世評は概ね高いが、私は最後まで退屈で仕方なかった。半年後に小惑星が衝突し人類が滅びるという設定は、フィクションとしては手垢のついたものだが、それを加味したミステリとして意識しつつ読み終えても、さほどの新鮮味は感じなかった。本作は三部作の第一弾で、最終作では絶滅まで後一週間となっている。極めて異常な状況下で、極めて平凡な刑事を主人公に、極めて凡庸なミステリが展開する。幾らでも面白くなる要素はあるのだが、第一作を読んだ限りでは、〝敢えて〟奇をてらうことを避け、絶望と退廃感が徐々に人心を蝕んでいく情景/エピソードが抑え気味に語られる。これが果たしてリアリティに富むものかどうかは読者の受け止め方次第だが、仮にこのような事態になれば、政府による完全な統制は為されず、管理抑制された理性の効く社会とは真逆となり、半狂乱の地獄絵図さながらに終焉していくだろう。物語は、保険会社の男の自殺に疑念を抱いた新米刑事が、荒んでいく街の中で地道な捜査を続けた末に真相に辿り着くという展開だが、主人公が事件に執着する動機付けに乏しく、頻発してるであろう他の犯罪などに殆ど触れていかない。絶望の中に僅かな希望を見出し、高尚なるヒューマニズム賛歌として読み取ることは可能だが、残された時間の中で一介の刑事が為すことの不条理さばかりが際立つと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ★ミステリー
感想投稿日 : 2016年10月15日
読了日 : 2016年10月15日
本棚登録日 : 2016年10月15日

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