当時の大江健三郎のあらゆるエッセンスが詰め込まれた意欲作。
物語の設定とストーリーは、自身の故郷である愛媛の山間の村落、障害を患ったであろう子の誕生、戦後民主主義の中のアメリカ文化、学生運動と命をかける青春(跳ぶ、ほんとうのことなど)などの作者のバックグラウンドが複合して形作られている。
同時に、冒頭の難解な長文はロシアフォルマニズムの異化の手法、弟鷹四の村落への反乱とその消滅は当時からの有力な学説であった異人による日常への祝祭の現出を採用しており、それらをすべて一つの作品で詰め込んだ内容の濃い作品なのだ。
一度目を読むのに時間はかかるが、それだけの意味のある作者の最高傑作。
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- 感想投稿日 : 2017年9月3日
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- 本棚登録日 : 2017年9月3日
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