万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社 (1988年4月4日発売)
3.94
  • (157)
  • (78)
  • (133)
  • (11)
  • (8)
本棚登録 : 1754
感想 : 130
5

当時の大江健三郎のあらゆるエッセンスが詰め込まれた意欲作。
物語の設定とストーリーは、自身の故郷である愛媛の山間の村落、障害を患ったであろう子の誕生、戦後民主主義の中のアメリカ文化、学生運動と命をかける青春(跳ぶ、ほんとうのことなど)などの作者のバックグラウンドが複合して形作られている。
同時に、冒頭の難解な長文はロシアフォルマニズムの異化の手法、弟鷹四の村落への反乱とその消滅は当時からの有力な学説であった異人による日常への祝祭の現出を採用しており、それらをすべて一つの作品で詰め込んだ内容の濃い作品なのだ。
一度目を読むのに時間はかかるが、それだけの意味のある作者の最高傑作。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年9月3日
読了日 : -
本棚登録日 : 2017年9月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする