"椿宿の辺りに"を読んだ後、再読してようやく、私はこの物語が好きだった事に気付いた。最初に読んだ際は、主人公の曖昧な記憶、過去と現在(現在と言っても、ファンタジーに満ちて象徴を読み取らないとならない)が入り交じる物語に囚われすぎ、印象を上手くまとめられていなかった。
蓋をしてしまうほどに辛い過去があり、そのせいで酷薄な態度を取っていたのが、精霊?土地神?達に導かれて少しずつ自分の記憶と向き合えるようになった。そして会うことの出来なかった息子とも言葉を交わし、何よりも、息子に名をつけることが出来た、というのは、自分の過去へのこだわりを捨てる上でも、息子への想いを昇華させるうえでも、これ程の行為は無かったのではないか。名をつけてもらったからこそ、息子の魂は"何者でもない"状態から"会えなかったかけがえのない存在"へと変わり、二人共が前に進めるようになったのではないか、と思う。
最後に、妻とお互いに言えなかった気持ちを通わせ、この二人もまた前に進めるようになったところも、心を温かくさせてくれる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年1月22日
- 読了日 : 2022年4月23日
- 本棚登録日 : 2022年4月23日
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