新版 楽しむ数学10話 (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2012年11月21日発売)
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<span style="color:#0033ff;"><帰納法>
 数学的帰納法とは古代ギリシアからある古い論法であるが、組織的に使うと大変強力であり、数学が汲めども尽きない体系である源泉でもある。
 自然数の加法や乗法も数学的帰納法から証明される。

<文字記号法>
 数字の代わりに文字を使う方法はそう古くない。
 「AならばBである」という一般概念(命題)に文字(命題変数)を導入したのは、ドイツが生んだ空前絶後の博覧強記の人ライプニッツであった。
 ライプニッツは古今を絶する記号法の達人であった。
 彼に比肩するか、超えるのはガウスやガロアと並び称される「数学王」オイラーである(後述)。
 デカルト、ライプニッツ、オイラーの三者により、現行の数学記号の主なものはほとんど出尽くした。

<フェルマー>
 17世紀前半に活躍したフェルマーは傑出した数学的天才だった。
 だが、残されたものには稚拙や幼稚なもおおい。しかし、数論と言えるほどのものがない時代に、制限された思考方法と未成熟な記号体系の中で、まがりなりにも証明の方針を見つけることができたということにある。
 そして、彼は後世の数学者たちを350年間も悩ませ続ける、悪魔の定理、「フェルマーの最終定理」を残した。
 
フェルマーの最終定理
http://www.h5.dion.ne.jp/~terun/doc/f1.html

<デカルトとパスカル>
 哲学者として有名なデカルトは、一方で数学者でもあった(学んでいたのは今の幾何学)。
 彼は「我思うゆえにわれあり」で有名。
 デカルトは幾何学を学んで得た数学的な考え方を、数学以外の分野にも適用して、その威力を確かめようとした。
 簡単に言えば、全学問の数学化というのが、デカルトの立てた壮大なプログラムであった。
 幾何学の厳密性と代数学の簡便さ(当時、代数学は未発達な技術とされていた)を併せ持つように統合するのが、当時の理想であり、デカルトもそれを目指した。

 一方のパスカルはデカルトと違ったスタンスであった。
 「あらゆる用語を定義し、あらゆる命題を証明する(つまり、デカルトが目指した境地)」事が可能なら立派だが、「それは絶対に不可能である」。なぜなら、仮に自明と思われる言葉がさらに説明可能だとしても、さらにその説明を説明しなくてはならず、いくら遡っていってもきりがないから。
 では、幾何学的推論は何の価値も確実性もないのか?
 それに対し、パスカルは、数学的論証の厳密さは絶対的なものではないが、「自然に照らして」明白な事だけを前提にしているのだから、その正しさは「自然」が保証してくれる、そして人間にはこれ以上の正しさは望みえない、と答える。
 
 神や奇跡といった問題に至るまですべてを厳密に説明し、証明し尽くすことができるはずだと考える人と、個々にしか取り扱いができない微妙なもの、さらには個々に取り扱うことすらできない神秘が存在することを認める人とでは、世界観が違う。前者はデカルトであり、熱心なカトリック教徒だったパスカルは明らかに後者である。
 
 パスカルは信仰告白で、

 全きこころよき自己放棄
 イエス・キリストおよび我が指導者への全き服従

 と述べている。

 ニーチェはキリスト教が過剰な自己侮蔑と自己犠牲を強いることで優れた人物を滅ぼすとして、パスカルの例をあげている。

<数学王オイラー>
 あくなき好奇心と、天才的な記憶力で、量、質ともに際立った結果を残した「数学王」。
 非常に「熱狂する」タチで、一つ結果が出ても、さらにより自然、より簡単な証明を求めて飽きることなく試行錯誤を繰り返した。また、自分の功績、他人の功績にこだわることはなく、人の得た結果に対しても惜しみない賛辞を送ることも常であり、自分が先に得た結果も友人に譲ることさえあった。
 自身の功績の先見性を気にする数学者にしては非常に得意的な気質であり、完成した姿でしか人前に出さない「数学王」ガウスとは全く反対。

 要するにオイラーは数理に関係する事なら何でも好きで、ちょっとでも規則性のありそうなものならなんでも数学化しようとした。
 ある時、音楽理論にまで首を突っ込み、自分でも作曲ができると主張した。そのためフリードリヒ2世の宮廷指揮者とコンテストすることになったが、当日オイラーが演奏したメヌエットは優雅さがカケラもなく、演奏が終わると聞いていた人たちは皆一様にほっとしたほどひどいモノであった。


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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年12月22日
読了日 : 2013年2月9日
本棚登録日 : 2018年12月22日

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