内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力

  • 講談社 (2013年5月14日発売)
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 思えば昔から、「E(私)は勉強が好きだから」と(時には賞賛を、時には皮肉を込めて)周囲に言われて育ってきました。
 私からすれば、知的好奇心を満たしてくれて一人で取り組める学業は肌に合い、反面、騒がしいクラスメイトとの交流は不得手でした。同世代の子たちが「何故?」と思えるようなことで盛り上がっているのを遠巻きに眺めているような子でした。
 そしてそんな態度が、(私にはまったくそんなつもりはないのに)見下している、蔑んでいる、孤高を気取っていると言われたこともありました。

 本書のことは少し前から気になっていて、いつか読みたいと考えていましたが、とうとうその時が来ました。
 もっと早くに読んでいたら良かったのに! と、思わずにはいられませんでした。

 いままで、「陰気」「卑屈」「社交性がない」「頭の悪い人間を馬鹿にしたよそよそしい態度」と内向性のことを悪く言う意見にばかり出会ってきましたが、やっと“自分側”のチームに加入できた。そういう気持ちです。

 かといって、外向型の人間を過度に見下したり、内向型と外向型を対立させるような構図は本書では採られておらず、
「どちらも世界には必要な存在。でも、外向型の世界はもっと内向型を評価してもいい頃だよね」
という本書の立場には大きく賛同できます。

 自分にはどうやらHSP気質もあるようなのですが、HSPを謳う本にはHSPとそれ以外を分けて「HSPでない人達は~(否定的意見)」と書いてみたり、HSPは素晴らしいということを書きたいがために、それ以外の人々を貶めてしまっている本が少なくありません。そういった本を読んだことがあるからこそ、この本は本当に素晴らしいということがよくわかりました。

 私もそうなのですが、内向型の人々が他人に「放っておいて欲しい」と感じる主な原因は、自分の周りの人々が「同じテンションになれよ」と強く求めすぎるからなのだと思います。

 少し離れた場所から皆を見ているのは、馬鹿にしているからでもなければ相手を嫌っているわけでもなく、ただそこ(部屋の隅)が最も心地良いから。それに尽きるのです。

 以前、職場で同僚に「Eさん(私)って三人以上になると急に静かになりますよね」と非難めいた感じで言われたことがあるのですが、それも本当に難しい問題で、考えてから話すタイプの私と、おしゃべりが得意なその他大勢とでは会話のテンポや深さが全く違うので、なかなか噛み合いません。妥協策として取れたのは、同意していますよというサインになる頷きや相づちだけは(自分の頭が考え事でビジー状態の時でも)必ずするということくらい。ところが、不思議なことに同じタイプの人と一対一なら、五時間でも六時間でも平気で話せるのです。
 これを私は単なる「相手との関係性の問題」と考えていましたが、本書を読んでその答えが漸く理解できました。

 通して全文を読み終えた今抱いた感想は、「私、今のままでもいいんだ」ということです。
 ブラッシュアップ(磨きをかける)する必要はあるけれど、リビルド(再構築)する必要はどこにもない。それどころか、リビルドは自己否定してしまうことになるし(今の自分がダメだからやり直すということ)、折角持っている才能の芽を失ってしまうことかもしれない。
 そう考えると、これからの人生が少し楽しみになってきました。

 内向型の人はもちろん、「物静かな人がどうも苦手なんだけど」と感じている外向型の人には是非読んで頂きたい内容です。両方が互いに手を伸ばさなければ協同することは難しいのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: レビュー済
感想投稿日 : 2022年9月9日
読了日 : 2022年9月9日
本棚登録日 : 2022年9月9日

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