リリイ・シュシュのすべて

著者 :
  • KADOKAWA (2001年9月1日発売)
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感想 : 70
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最初に映画を観たときの、あの感情が今でも忘れられない。
胸の中に閉まっていたものをこじ開けられたような感覚。まさしく『共鳴』。14歳の感情をここまで表現できるのかと驚いた。

そんな映画版に感化され、すっかりリリイシュシュの虜となった私は小説を読むに至ったのである。
小説版と映画では異なる箇所が何点かある。優越をつけるつもりはないけれども、やはり最初に見た映画のインパクトが忘れられない。しかし、小説版では映画で足りなかった説明や場面を知ることができた。
田舎の閉鎖空間で、自分の周りだけが世界なのだと感じてしまうあの焦燥感。思春期ならではの感情。自分の世界の中心、リリイシュシュ。
リリイシュシュの楽曲は不思議な魅力に包まれている。私もその魅力に魅了され、ずっと聴いてる。
Salyuさんがリリイシュシュとなっているのだが、Salyu≠リリイシュシュである。リリイはリリイなのだ。
映画が公開されてから10年後にSalyuがリリイ名義で「エテール」という曲を公開した。そこにリリイはいなかった。私の知ってるリリイは死んでしまった。
『リリイシュシュのすべて』の世界から戻って来れなくなった人は多いと思う。もう少し歳を取ればこの焦燥感から脱却できるのだろうか。今はまだこの世界観に浸かっていたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年5月27日
読了日 : 2020年5月27日
本棚登録日 : 2020年5月27日

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