戦争体験を語り継ぐとは一体どのようなことなんだろうと思う。純粋な体験としてのみ存立させ続けることだろうか。それとも体験を解釈し、意味を与えることだろうか。本書ではその両極端な例が描かれる。
戦中世代の人間が体験の原風景を語ることにより戦後世代の意味づけを封殺しようとする様子、また戦後世代の人間が政治的な意味づけをすることで戦中世代を批判する様子。
その極端な例を見るにつけ、現代において現実的に戦争体験を語り継ぐというのは善悪を別として、その性格として原体験と教訓の両方を適度に配合することなんだろうと感じた。イデオロギーがかった援用は受容されにくいだろうし、原体験の羅列はあまりにも理解されないだろう。
戦前世代、戦中世代、戦後世代とそれぞれジェネレーションギャップが顕著になっている様子が興味深かった。それぞれの上の世代の教養主義や戦争体験をある種の権威と感じて反発している様子が描かれる。各世代がなぜそのようなポジションに立たざるを得なかったのか、今を生きる我々は十分に意識的であるだろうか。
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- 感想投稿日 : 2014年5月1日
- 読了日 : 2014年5月1日
- 本棚登録日 : 2014年5月1日
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