日本人に帰化した作者が、英語圏読者に向けて日本のエキゾチズムを紹介した文を、英語を学んだ日本語話者が翻訳したものを、日本語で読む。それも100年越しに。
この面白さ。
(円城塔が「ミミ・ナシ・ホーイチ」と訳して、当時の英米人の抱いた感触を再認識させてくれる翻訳をしている、というので……今後手を伸ばしたいところ。)
さて小泉八雲といえば怪談の人、漱石の前任者。
熊本や松江といった私の仕事圏に頻発する人で、いずれぜひと思っていた。
本書は怪談だけではなく、聞き書き、エッセイ、論考、小説っぽいもの、などなどバラエティ豊か。
来日以後の作品を8割がた網羅している。
そして編集の妙。時系列順ではない。
前半に並べているのは、1900年から1905年。
後半に、1894年以降のものを、と逆転させている。
そのため一番最後に「焼津にて」が来る。本書全体のエッセンスのような作品だ。
全体としては怪談の乱れうちのリズムが快かったり、いい話と残虐でエグい話が混ざる割り合いもよい。
個人的に最高傑作だと感じたのは「草ひばり」。
1850-1904年。54歳没。
■『影』1900(Shadowings)
和解(The Reconciliation)
衝立の乙女(The Screen-Maiden)
死骸にまたがる男(The Corpse-Rider)
弁天の同情(The Sympathy of Benten)
鮫人の恩返し(The Gratitude of the Samebito)
■『日本雑記』1901(A Japanese Miscellany)
守られた約束(Of a Promise Kept)
破られた約束(Of a Promise Broken)
果心居士のはなし(The Story of Kwashin Koji)
梅津忠兵衛のはなし(The Story of Umetsu Chubei)
漂流(Drifting)
■『骨董』1902(Kotto)
幽霊滝の伝説(The Legend of Yurei-Daki)
茶碗の中(In a Cup of Tea)
常識(Common Sense)
生霊(Ikiryo)
死霊(Shiryo)
おかめのはなし(The Story of O-kame)
蠅のはなし(Story of a Fly)
雉子のはなし(Story of a Pheasant)
忠五郎のはなし(The Story of Chugoro)
土地の風習(A Matter of Custom)
草ひばり(Kusa-Hibari)
■『怪談』1904(Kwaidan)
耳なし芳一のはなし(The Story of Mimi-Nashi-Hoichi)
おしどり(Oshidori)
お貞のはなし(The Story of O-Tei)
乳母ざくら(Ubazakura)
かけひき(Diplomacy)
食人鬼(Jikininki)
むじな(Mujina)
ろくろ首(Rokuro-Kubi)
葬られた秘密(A Dead Secret)
雪おんな(Yuki-Onna)
青柳のはなし(The Story of Aoyagi)
十六ざくら(Jiu-Roku-Zakura)
安芸之助の夢(The Dream of Akinosuke)
力ばか(Riki-Baka)
■『天の川物語その他』1905(The Romance of the Milky Way and Other Studies and Stories)
鏡の乙女(The Mirror Maiden)
■『知られぬ日本の面影』1894(Glimpses of Unfamiliar Japan)
弘法大師の書(The Writing of Kobodaishi)
心中(Shinju)
日本人の微笑(The Japanese Smile)
■『東の国より』1895(Out of the East)
赤い婚礼(The Red Bridal)
■『心』1896(Kokoro)
停車場にて(At a Railway Station)
門付け(A Street Singer)
ハル(Haru)
きみ子(Kimiko)
■『仏陀の国の落穂』1997(Gleanings in Buddha-Fields)
人形の墓(Ningyo-no-Haka)
■『霊の日本にて』1899(In Ghostly Japan)
悪因縁(A Passional Karma)
因果ばなし(Ingwa-Banashi)
焼津にて(At Yaidzu)
- 感想投稿日 : 2019年12月25日
- 読了日 : 2019年12月25日
- 本棚登録日 : 2014年4月11日
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