夜のアポロン

著者 :
制作 : 日下三蔵 
  • 早川書房 (2019年3月20日発売)
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本棚登録 : 286
感想 : 34
4

「夜のリフレーン」と対を成す単行本未収録短篇集。76年から96年の16作。
改めて言うが単行本未収録でここまでのクオリティ。全然書き散らしていないのだ。
「小説の女王」と呼ばれる所以もここで、小説への愛が小説を書かせているのだ。
一作ごとに語りの形式を工夫し、作者の好みや興味を突き詰めることで熟成される、短編小説の粋、まさにここにあり。
ある時代のある女性が感じていた感情のフレイバーが、数十年後のおっさんに、ここまでびんびん響くとは。
少女的な厭世観に浸されたいという願望が、あるんだ。それを皆川博子が、満たしてくれるんだ。
しかし皆川博子は甘美な少女時代に読者を封じ込めない。「かつて少女だった成人女性」の視点も忘れないのだ(「閉ざされた庭」)。
そしてまた、「兎狩り」に描かれた、青年をこじらせたおじさんの恐ろしさよ。中高生のころに「兎狩り」を読んでいたらヤバかっただろう。中上健次レベルの毒。
それなのにインタビューを読むと、大変チャーミングな御方なのだ。恋しちゃうよ。

夜のアポロン 兎狩り★ 冬虫夏草★ 沼 致死量の夢★ 雪の下の殺意 死化粧★ ガラス玉遊戯 魔笛★ サマー・キャンプ アニマル・パーティ★ CFの女 はっぴい・えんど ほたる式武秘抄 閉ざされた庭★ 塩の娘

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 別格3(春樹 龍 皆川博子 赤江瀑 らも 津原)
感想投稿日 : 2019年8月12日
読了日 : 2019年8月12日
本棚登録日 : 2019年8月12日

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