この30年の小説、ぜんぶ ; 読んでしゃべって社会が見えた (河出新書)

  • 河出書房新社 (2021年12月25日発売)
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感想 : 28
3

30年毎年、ではない。
毎年はせいぜい4年で、あとは刊行直前に30年ということにするためにレンジを広く取った。
そして選書自体が「そういう傾向」のものなので、そうなるだろうなという放談に過ぎないが、まあまあ面白い。
文芸誌を集中的に読んでいた時期とも重なるので。

@以下、コピペして、【 】で追記。

2011年から令和まで、計6回おこなわれた本をめぐる対話から、日本社会が浮かび上がる。思いもよらない解釈や、意外な作品との繋がりなど、驚きと発見に満ちた、白熱の対談集!

目次

はじめに

●第一章 震災で小説が読めなくなった
ブック・オブ・ザ・イヤー2011

生存にかかわるリアリズムは最強だ
『マザーズ』金原ひとみ/『苦役列車』西村賢太/『ニコニコ時給800円』海猫沢めろん

謎の「いい女」小説はちょっと前衛 【自分で足場を作る作家は、現実が変わっても平気】
『きことわ』朝吹真理子/『私のいない高校』青木淳悟/『いい女vs.いい女』木下古栗/『これはペンです』円城塔

緊急時、ヒトはクマやウマになる 【文学には、夢を見させる作用と、覚醒させる作用がある】
『馬たちよ、それでも光は無垢で』古川日出男/『雪の練習生』多和田葉子/『神様2011』川上弘美

君は3・11を見こしていたのか
『ボブ・ディラン・グレーテスト・ヒット第三集』宮沢章夫/『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』陣野俊史/『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』開沼博/『災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』レベッカ・ソルニット 高月園子訳

●第二章 父よ、あなたはどこに消えた!
ブック・オブ・ザ・イヤー2012

原発事故は終わっていない
『阿武隈共和国独立宣言』村雲司/『むかし原発 いま炭鉱』熊谷博子/『線量計と機関銃』片山杜秀

母と娘の確執が文学になるとき 【父と息子の近代文学150年でようやく母と娘】
『冥土めぐり』鹿島田真希/『東京プリズン』赤坂真理/『母の遺産 新聞小説』水村美苗

ここにいたのか、落ちこぼれ男たち
『K』三木卓/『大黒島』三輪太郎/『その日東京駅五時二十五分発』西川美和

嵐の中の、もうひとつの避難所
『燃焼のための習作』堀江敏幸/『ウエストウイング』津村記久子/『わたしがいなかった街で』柴崎友香【2012年に2010年という災害前夜を描く】

多色刷りの性と個性が未来を拓く
『ジェントルマン』山田詠美/『奇貨』松浦理英子

●第三章 近代文学が自信をなくしてる
ブック・オブ・ザ・イヤー2013

母と娘の第二章はけっこう不気味
『爪と目』藤野可織【せっかく母を始末したと思ったらクローンのように別の母が】/『abさんご』黒田夏子/『なめらかで熱くて甘苦しくて』川上弘美

巨匠にとって「晩年の様式」とは 【無意識であることを意識的に】
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹/『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』大江健三郎【家族に否定されても小説という表現に自分の生涯を賭けざるを得なかった人の悲しい話】

マルクスも驚く「労働疎外」のいま
『工場』小山田浩子/『スタッキング可能』松田青子

作家が考える震災前と震災後
『想像ラジオ』いとうせいこう/『初夏の色』橋本治【弱い父と息子】

わけがわからない「大作」の中で起きていること
『南無ロックンロール二十一部経』古川日出男/『未明の闘争』保坂和志

青春はあんまりだ
『青春と変態』会田誠/『永山則夫 封印された鑑定記録』堀川惠子/『世界泥棒』桜井晴也

●第四章 そしてみんな動物になった⁉
ブック・オブ・ザ・イヤー2014

ステキな彼女に洗脳されて
『死にたくなったら電話して』李龍徳/『吾輩ハ猫ニナル』横山悠太

家こそラビリンス
『穴』小山田浩子/『春の庭』柴崎友香【家が主人公。人に興味がない。人と人ではなく、人とモノの関係】

21世紀の私小説は社会批判に向かう
『33年後のなんとなく、クリスタル』田中康夫/『未闘病記 膠原病、「混合性結合組織病」の』笙野頼子/『知的生き方教室』中原昌也

近代の末路を描く「核文学」
『震災後文学論 あたらしい日本文学のために』木村朗子/『東京自叙伝』奥泉光【東京中私という究極の私小説】/『アトミック・ボックス』池澤夏樹/『聖地Cs』木村友祐

保存された記憶、または90歳の地図
『徘徊タクシー』坂口恭平/『ラヴ・レター』小島信夫/『夢十夜 双面神ヤヌスの谷崎・三島変化』宇能鴻一郎

●第五章 文学のOSが変わった
平成の小説を振り返る(2019)

下り坂の30年

今から思うと平成を予言していた
『タイムスリップ・コンビナート』+『なにもしてない』笙野頼子/『親指Pの修業時代』+『犬身』松浦理恵子/『OUT』桐野夏生

プロレタリア文学とプレカリアート文学
『中原昌也 作業日誌2004→2007』中原昌也/『ポトスライムの舟』津村記久子

異化される「私」 【近代的自我からはじまった日本文学はもう終わっている。新しいOSをインストールされている】
『インストール』綿矢りさ/『コンビニ人間』村田沙耶香/『スタッキング可能』松田青子/『野ブタ。をプロデュース』白岩玄

地方語と翻訳語の復権 【語り手が人間である必要すらない】
『先端で、さすわさされるわそらええわ』川上未映子/『告白』+『パンク侍、斬られて候』町田康/『イサの氾濫』木村友祐/『献灯使』多和田葉子/『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男

相対化される昭和 【昔のインテリに相当するのが女子高生で、批評的】
『ピストルズ』阿部和重/『東京プリズン』赤坂真理/『巡礼』+『草薙の剣』橋本治/『あ・じゃ・ぱん』+『ららら科學の子』矢作俊彦/『残光』+『うるわしき日々』小島信夫

日常のなかの戦争
『バトル・ロワイアル』高見広春/『阿修羅ガール』舞城王太郎/『虐殺器官』伊藤計劃/『となり町戦争』三崎亜記/『わたしたちに許された特別な時間の終わり』岡田利規

当事者として書くこと 【同時代的出来事を描くのには60年? あるいはとりあえず即応?】
『バナールな現象』+『雪の階』奥泉光/『神様2011』川上弘美

●第六章 コロナ禍がやってきた
令和の小説を読む(2021)

セクシュアリティをめぐって
『オーバーヒート』千葉雅也/『ポラリスが降り注ぐ夜』李琴峰

海外に渡った女性たちの選択
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』+『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』ブレイディみかこ/『道行きや』伊藤比呂美

SNSが身体化した社会で 【SNSが身体機能の拡張になっている】
『かか』宇佐見りん

世界に羽ばたく日本文学
『夏物語』川上未映子/『献灯使』多和田葉子/『密やかな結晶』小川洋子/『JR上野駅公園口』柳美里/『コンビニ人間』村田沙耶香/『おばちゃんたちのいるところ』松田青子

過去の感染症文学を読む 【言葉が人々を汚染して人々の紐帯を破壊していく。SNS】
『ペスト』アルベール・カミュ

コロナ文学は焦って書かなくてもいい
『ぺストの記憶』ダニエル・デフォー/『感染症文学論序説 文豪たちはいかに書いたか』石井正己

コロナ禍を描く日本文学最前線
『旅する練習』乗代雄介/『アンソーシャルディスタンス』金原ひとみ/『貝に続く場所にて』石沢麻依

記録を残すことの意義
『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』/『コロナ黙示録』海堂尊/『臨床の砦』夏川草介

おわりに
特別収録 ブック・オブ・ザ・イヤー2003~2010 全106作品選書一覧

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ブック・ガイド・ブック
感想投稿日 : 2023年8月17日
読了日 : 2023年8月17日
本棚登録日 : 2022年4月16日

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