▼かなり以前に読んで、その時に紛れてしまって感想を書きそびれてしまい。今となってはかなり忘れてしまっていますが・・・。
▼覚えているのは、読み始めた瞬間は、何やらカフカじみた不条理小説かな?うーん、ユーモアの要素は少ないかな?ちょっと苦手かな?辛いかな?と感じたんです。ところが読み終えて、大満足の一冊だった。
▼とある少女の、都会の一晩の冒険。一方では、謎の場所で眠り続ける、少女の姉。大都会東京の深夜。デニーズ。ジャズ・ミュージシャン。そして事件が起こる。ラブホテルで中国人の売春婦が、客に酷い乱暴をされて怪我をした。客はそのまま去った。事件に巻き込まれる少女。個性的で魅力溢れるラブホテルの女性マネージャーと店員たち。
▼フィリップ・マーロウばりの具体的な事件が緊張感を孕む一方で、全然現実的ではない「眠り続ける姉」の案件が差し込まれる。このアツアツとヒヤヒヤの温度差がたまらない。そしてラストはなんだかとっても夜明け感があって(現実的に夜が明けるということもあるのですが)なんだか村上作品らしからぬ感動までが(褒めてます)。
▼元々が、ふっと考えると「一冊だけ未読の村上長編がある!」ということから読み始めたのです。そんなコレクターズ・マインドみたいな理由で読まれるのは本としてはベストな運命ではない訳ですが、まあしかし出会いというのは得てしてそんなものだったりしますね。結果、村上さんの長編の中でも「好きなベストスリー」に入る一冊。
・・・と言ってもその3つってなんなんだろうと考え出すと・・・「1Q84」「海辺のカフカ」「アフターダーク」? うーんでも「風の歌を聴け」は外せない気も。いや「スプートニク」も・・・「ワンダーランド」は? 「羊をめぐる」だって今再読したらかなり面白いのでは・・・「騎士団長」も中盤のワクワク感は凄かったし・・・。
それぞれの読者にとってのベスト3があるでしょうねえ。
- 感想投稿日 : 2024年1月5日
- 読了日 : 2023年5月21日
- 本棚登録日 : 2023年5月21日
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