「NHK 100分 de 名著 ロジェ・カイヨワ『戦争論』 」。2019年 8月。西谷修。
大変に面白い一冊で、いつかまた読もうと思いました。100分de名著という番組の切口が僕は好きなので、こうなるともう原著は読まなくてもこの本は再読しそう(笑)。
この本自体読んだのが2019年なのでほぼ忘却。
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戦争の歴史を紐解きながら、これはよく言われることですが、第2次世界大戦にいたって、完全に「消耗品として兵士」になった。つまり、もう戦場の英雄は生まれない。無名なまま、消耗品として死んでいくだけ。
というわけで国家はこの「無名の消耗品として死ぬ」ということを美化せねばならない仕儀になる。美化宣伝しないと、盛り上がりませんから。で、こうなるともうイデオロギーって言うか、ほとんど宗教みたいなことになる。
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時代は前後してナポレオンの頃から、「国民国家」が「平民兵士」として誕生してくる、そのダイナミズム。このあたりも実にわくわくと解りやすい本だった。
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更には「戦争のルール」という歴史で見れば、21世紀のアメリカを中心とした「テロとの戦い
」というお題目の、怖さ。敵を「テロ」とするだけで善悪思想宗教化が完成するし、相手はもはや国家では無いから、敵をいくらでも、恣意的に作ることができる。
更に「戦争の民営化」という概念も面白かった。ただこれはかなり記憶の靄の中。
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「無名兵士の熱狂」が必要な戦争、という課題から共通した印象が残るのは、「戦争とは祭りである」ということ。地域の祭りであれ、学園祭であれ、ほんとにそこで熱狂したい、熱狂する人々にとっては、「熱狂」が絶対的な価値であり、そのベースには多数姓、一体感が不可避であり、祭りの中では平常時に許されないこともアリ、というモラルの逸脱が起こります。これはこれで、すごく面白く納得させられる論考。(祭り熱狂、一体感、みたいなのが10代の頃に大の苦手だったので(笑))
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歴史好きな人、戦争好きな人(戦争するのが好き、というよりは、戦争という話題や事象に興味深さを感じる、という意味で)には、かなりお勧め。言葉も平易。
- 感想投稿日 : 2020年7月4日
- 読了日 : 2019年11月22日
- 本棚登録日 : 2019年11月22日
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